2016 Fiscal Year Research-status Report
低酸素応答調節を介したマクロファージ分化誘導による網膜変性へのアプローチ
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16K20331
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
宮内 真紀 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 研究員 (70757830)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 加齢黄斑変性 / 低酸素誘導因子 / HIF |
Outline of Annual Research Achievements |
網膜の最外層に光を受容する視細胞は位置し、視細胞が失われる(網膜変性)と失明に至る。視細胞が失われ網膜変性と至る原因は、他因子疾患(加齢黄斑変性)、遺伝性(網膜色素変性症)、網膜剥離、炎症性疾患(ぶどう膜炎)など様々である。手術による治療法が存在する網膜剥離にしても、その治療が遅れ、一度視細胞が失われれば視力は取り戻せない。また個々の疾患の原因は様々であっても、最終的な表現型は視細胞欠失である。加齢黄斑変性(AMD)は先進国においてもっとも頻度の高い失明原因疾病の一つであり、脈絡膜血管新生の有無を問わず最終的には視細胞欠失が、失明を直接的に規定する。加齢・生活習慣・遺伝背景など、AMDの病態形成における原因は多岐にはわたるが、その共通の表現型は視細胞および網膜色素上皮(RPE)細胞の変性・脱落である。その病態形成において慢性炎症・異常免疫応答の関わりが指摘されている。網膜色素上皮(RPE)が重要な役割を担うことが報告されているが、根本的な病態メカニズムは分かっていない。近年、ストレス応答の中心的な分子として低酸素誘導因子(HIF)が、様々な病態生理に関与していることが明らかにされつつある。本研究では、免疫担当細胞が発現するHIFの網膜変性における役割を明らかにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通りCre/LoxP技術を利用した実験手法を用いてHIF、VHLを標的とした細胞特異的コンディショナルノックアウトマウスの作成が進行している。また、網膜の正常発生および実験的血管新生モデル、神経変性モデルが確立し、これらにおける網膜の構造・機能評価系が安定して行えるようになった。実験誘導モデルだけでなく、遺伝性網膜変性モデルの導入も完了し、これらにおける免疫担当細胞の局在・機能評価の実験系を構築している。さらに、遺伝子改変だけでなく、薬剤による介入も検討しており、既知HIF阻害剤の網膜変性モデルへの投与実験系を確立した(Miwa Y, Miyauchi M et al. ARVO Annual Meeting 2016、三輪、宮内ら. 第121回 日本眼科学会総会)。新規HIF阻害剤のスクリーニング実験も並行して行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
コンディショナルノックアウトマウスの実験にて特定のHIFアイソフォームに依存する表現型の変化が得られれば、フローサイトメーターを用いて、個々のモデル動物における網膜免疫細胞の発現遺伝子変化を解析する。その中で、これら網膜変性モデルにおいてHIFによって調節されるマクロファージ分化が表現型に実際影響を与えているのか検証する。また、マクロファージを遺伝的・薬剤誘導的に除去した場合の網膜変性モデルの表現型とも比較する。さらに既存の、あるいは新規のHIF阻害剤を用いて、薬剤的にHIFの発現変化を誘導した場合に、マクロファージ分化の変化および表現型に対する介入が可能か検証する。
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Causes of Carryover |
少額だったため購入可能でかつ実験に用いる消耗品類が無かったため
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の交付額と併せて消耗品を購入する予定
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