2016 Fiscal Year Research-status Report
NSAIDsによる角膜上皮傷害はロイコトリエンB4第二受容体経路の阻害に起因する
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16K20334
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
岩本 怜 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (10568207)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ロイコトリエンB4 / 角膜創傷治癒 |
Outline of Annual Research Achievements |
ロイコトリエンB4はアラキドン酸カスケードによって産生される炎症性脂質メディエーターである。ロイコトリエンB4第二受容体BLT2は、当初、ロイコトリエンB4に対する低親和性受容体として同定されたが、実は、アラキドン酸のCOX代謝物で、トロンボキサンA2産生時の副産物として考えられていた脂肪酸12-HHTがBLT2の内因性のリガンドであることを、当研究室の奥野らが明らかにした (Okuno T. et al. J. Exp. Med., 2008)。さらに本研究室では、BLT2が腸管上皮細胞に発現し、腸管のバリア機能を増強することや、皮膚ケラチノサイトに発現し、皮膚の創傷治癒を促進することも明らかにした (Iizuka Y. et al. FASEB J., 2010, Liu M. et al. J. Exp. Med., 2014)。しかしながら、他の臓器における12-HHT/BLT2経路の役割は、いまだに全く不明である。 眼球は、腸管や皮膚と同様に、外界と直接接する臓器であり、眼におけるバリア機能の維持や創傷の治癒は、その恒常性を維持するために不可欠な機能である。一方で、非ステロイド性抗炎症薬 (NSAIDs) を点眼薬として投与されている患者が角膜上皮障害を起こすことは、眼科臨床上しばしば経験することであり、実際にそのような報告もなされている(Guidera AC. et.al. Ophthalmology., 2001)。しかしながら、その分子機序は長年不明であった。そこで申請者は、「12-HHT/BLT2経路が眼球におけるバリア機能の維持や創傷治癒の促進に寄与しており、NSAIDs点眼によって12-HHTの産生が阻害されると、眼表面の恒常性が破綻し、様々な障害を引き起こす」との仮説を立て、検証を行うことにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヒト角膜上皮不死化細胞やヒト角膜上皮初代培養細胞におけるBLT2の活性化を検出するため、BLT2リガンドである12-HHTあるいは合成BLT2作働薬がヒト角膜細胞に内在性に発現するBLT2を活性化するか否かを抗リン酸化ERK抗体を用いたウェスタンブロッティングで確認した。 また、12-HHT/BLT2経路が角膜上皮細胞の細胞移動を促進するか否かIncuCyteを用いたスクラッチ アッセイで検討した。スクラッチ後、3時間おきに細胞の移動を観察した。BLT2作働薬の添加により細胞の移動が促進された。また、12-HHT/BLT2経路が増殖と移動のどちらに影響するのかを検討するため、細胞増殖能の検討を行った結果、増殖ではなく移動に関与している事が示唆された。 さらに、角膜創傷治癒遅延のメカニズムにα-SMAが関与することを証明するため、ヒト角膜上皮不死化細胞に12-HHTを添加し、各タイムポイントで細胞からtotal RNAを抽出した。そのサンプルを用いてACTA2発現量が12-HHT刺激により上昇するかをmRNAレベルで検討した。予想していたように、12-HHT刺激によりACTA2の発現量の上昇を認めた。
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Strategy for Future Research Activity |
眼組織における12-HHTの供給源を同定する BLT2リガンドである12-HHTがマウス眼球に存在することを既に明らかにしたが、涙腺が12-HHTを供給している可能性もある。したがって、マウス涙液を採取し、質量分析計を用いて12-HHTを定量する。また、臨床サンプルを用いた実験で、ヒトの涙液中に12-HHTがどの程度存在するかを質量分析計を用いて定量する。患者の同意を得られた涙液を用いて脂質定量を行い、角膜創傷治癒遅延が認められる患者 (NSAIDs長期使用者やドライアイ患者、糖尿病や膠原病を罹患している患者など)の涙液中に含まれる12-HHT含有量を対照サンプルと比較する。 現在は実験のと同時に論文の執筆も進めており、データが揃い次第投稿の予定である。
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Causes of Carryover |
平成28年度は細胞を扱う実験を中心に行った。しかし、初代培養ヒト角膜細胞を用いた実験と計画していたが、今年度は新規に購入しななかったため、当初計画していた消耗品費用を次年度に持ち越すこととなった。また、メカニズムを追求してゆくため、siRNAでACTA2遺伝子をノックダウンさせるための試薬を購入する必要があるが、平成29年度に購入予定である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
初代培養ヒト角膜細胞を用いた実験を行うため、細胞や培養液・プレートなどの消耗品の購入を予定いている。また、siRNAでACTA2遺伝子をノックダウンさせるための試薬を購入する予定である。 平成29年度は論文投稿の予定であるが、そのための費用も必要である。 旅費に関しては、海外での学会1つと国内学会2つを予定している。
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Research Products
(2 results)