2016 Fiscal Year Research-status Report
後発白内障におけるプロテオグリカン・デコリンの関係と機能解析
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16K20336
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Research Institution | Kanazawa Medical University |
Principal Investigator |
柴田 伸亮 (稲垣伸亮) 金沢医科大学, 医学部, 助教 (30440514)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 眼生化学・分子生物 |
Outline of Annual Research Achievements |
1)現在、唯一の白内障治療は、手術で混濁した水晶体を除去し、眼内レンズを挿入する方法である。しかし、術後の後発白内障(PCO)により、再度、視機能低下をきたすことがある。ラットPCOモデルの水晶体上皮細胞(LEC)は、術後1週目で創傷治癒に伴う上皮間葉系移行変化を生じ、2週目以降赤道部水晶体嚢において水晶体線維再生という異なる細胞変化を生じる。今回、ラットPCOモデルを作成し、術後0、1、2週目におけるLECの遺伝子発現の継時的変化をDNAマイクロアレイで網羅的に解析した。結果:Day0に比べて、1週, 2週後に発現が2倍以上になっていた遺伝子の中でも100倍以上増加していたのがデコリン(DCN)であった。他にコラーゲンやフィブロネクチン、以前よりPCO関与の報告があるトロポミオシン、TGFβ誘導因子などが検出された。これらDCNやTGFβ誘導因子はリアルタイムPCRでも発現上昇を確認した。Day0に比べて1W後に発現が1/2以下になり、2W後に発現が2倍以上になっていた遺伝子にγクリスタリンやフィレンシンなど、分化した水晶体線維に発現する遺伝子を認めた。 2)DCNはヒトLEC (HLEC) 及び房水中にも発現しているかを、ヒト白内障手術時に採取したサンプルで解析した。また、年齢及び白内障混濁程度との関係も解析した。結果:金沢医科大学臨床研究倫理委員会の承認を得て施行した。2015年5月~12月までで、金沢医科大学病院で白内障手術を行い、文書にて同意を得た患者82名101眼(男性34名39眼、女性48名62眼)、平均年齢71歳。対象者の中でも増殖性糖尿病網膜症や硝子体出血、ステロイド使用者は除外した。結果HLECにもDCN遺伝子発現を認め、房水中にもDCN が検出された。DCN遺伝子発現量と房水中DCN濃度は年齢や水晶体混濁程度に関わらず様々な値を認めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画通りに実験が進行しているため
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Strategy for Future Research Activity |
1)DCNのノックアウトマウスの作成 DCNのノックアウトマウスをCRSPR-CASシステムを用いたゲノム編集技術により作成する。DCNノックアウトマウスはホモでは胎生致死、ヘテロマウスでは皮膚の脆弱性が報告されている。しかし、眼球の形態に関する報告はない。今回DCNノックアウトヘテロマウスを作成し、水晶体の形態変化のみならず白内障やPCOモデルを作成し、水晶体におけるDCNの役割を解明する。
2)DCN添加によるPCOで上昇するTGFβによるDCN発現の変化や、PCO抑制効果の解析 本研究では、細胞増殖やEMTを制御する標的因子としてのDCNの機能解析により、後発白内障予防薬の開発を目指す。水晶体上皮細胞(LEC)の培養細胞を用いて、DCN投与による水晶体上皮細胞の変化、TGFβにより誘導される上皮間葉系移行やEpidermal growth factor (EGF)が関与する細胞周期制御機構について解析する。また紫外線など各種ストレス下でのDCN発現量の変化を検討する。
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