2018 Fiscal Year Research-status Report
幹細胞エクソソームと人工生体材料を用いた乳房再建における被膜拘縮制御法の開発
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16K20357
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
渡部 聡子 岡山大学, 大学病院, 助教 (20379803)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | PGAシート / シリコン / 抗炎症作用 / 被膜拘縮 / 幹細胞 / エクソソーム |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者らはこれまでポリグリコール酸(以下PGA)シートを用いた人工物による乳房再建の臨床試験を行ってきた。しかし長期的な人工物周囲の被膜拘縮の解決には至っていない。本研究では、幹細胞由来エクソソーム含浸PGAシートを用いて新たな乳房再建術式の確立とその分子調節機能解明を目的とする。 本年度の実験では幹細胞産生因子がラット生体内での異物反応および被膜形成への影響について検討を行った。幹細胞産生因子はラット骨髄由来幹細胞を培養、コンフルエントに達した時点でFBSを含まない培地に交換し、24時間後に幹細胞産生因子として回収した。動物実験はコントロール群としてラット背部皮下にPGAおよびPGAで被覆したシリコン、実験群として幹細胞産生因子含浸PGAおよび同PGAで被覆したシリコンを背部皮下に埋入した。埋入1週、3週後に摘出、組織学的検討を行った。 PGAおよび幹細胞産生因子含浸PGAを埋入した試料では、埋入1週ではPGA線維周囲に多数の多核巨細胞の集族が認められ、リンパ球を主体とする激しい炎症性細胞の浸潤が認められた。埋入3週では炎症反応は減少傾向にあるもののPGA周囲には異物巨細胞が認められた。PGAおよび幹細胞産生因子含浸PGAを埋入した試料では、1週、3週の試料共に両者に組織学的に大きな差が認められなかった。 PGAおよび幹細胞産生因子含浸PGAで被覆したシリコンでは、埋入1週ではシリコンが無い試料と比較すると炎症反応がより強い傾向が認められたが、幹細胞産生因子含浸PGAで被覆したシリコンでは、炎症反応が若干抑制される傾向が認められた。埋入3週後では炎症反応は減少し、シリコンに接した部位で被膜形成を認めが、幹細胞産生因子を含浸させた試料では、被膜形成が少ない傾向が認められた。 今後実験数を増加させて詳細を検討するとともに、定量的に炎症反応等を測定する必要性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
幹細胞の培養および幹細胞産生因子の回収において安定した結果を得るのに時間がかかった、また共同研究者の異動にともないの実験の遂行に遅れが生じた。本年度は実験手技と共同研究者との連携が安定して実施できる環境がととのったため問題ないと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度はより簡便にエクソソームを得られる方法として脂肪幹細胞からエクソソームを回収する方法を検討する。まず脂肪幹細胞の培養を行い、脂肪幹細胞産生因子をネオベールに含浸させ、昨年度と同様の動物実験を行う。同時に培養上清に含まれるエクソソームをウェスタンブロッティングにて確認を行うほか、IL6などの炎症性サイトカインの定量を行う。さらに、培養上清からエクソソームだけを抽出して同様の実験を行う予定である。
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Causes of Carryover |
理由)本年度はラット個体数を増やしてさらに幹細胞培養および培養上清を加えた追加実験を行い、組織学的検討を行なった。しかし特異蛋白や遺伝子学的検討には至らなかったため、これらに使用するためのプライマー、試薬等の購入資金に余裕が生じた。 使用計画)実験動物の購入、飼育維持費および細胞培養とサイトカイン定量にともなう試料、外注費にあてる予定である。
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