2016 Fiscal Year Research-status Report
難治性皮膚潰瘍に対する新たな治療法確立を目指す炭酸ガスレーザーの創傷治癒効果解析
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16K20369
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
上森 友樹 順天堂大学, 医学部, 助手 (70773836)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 炭酸ガスレーザー / 低出力照射治療 / 線維芽細胞 / 創傷治癒 / シグナル伝達分子 |
Outline of Annual Research Achievements |
炭酸ガスレーザーの低出力照射治療(LLLT)が、皮膚創傷治癒を促進させる効果があると知られている。今回我々は、その細胞生物的なメカニズムを解明することを目的とした研究を行った。 まず、炭酸ガスレーザーのLLLTによるヒト皮膚線維芽細胞の増殖能、遊走能への影響をみるために、播種した細胞に様々な出力条件(0.1, 0.5, 1.0, 2.0, 5.0J/cm2)でレーザーを照射した後に、それぞれMTS assay、Scratch assayを行った。次に、1.0J/cm2の条件で炭酸ガスレーザーを照射した線維芽細胞からタンパク質を採取し、Akt, ERK, JNKといった細胞内シグナル伝達分子の活性変化を、Western Blot Analysisで解析した。最後に、Akt, ERK, JNKそれぞれの阻害剤を使用し、各種シグナル伝達経路を阻害した状態で、MTS Assay, Scratch Assay及びWestern Blot Analysisを行った。 結果として、MTS assay及びScratch assayでは、1.0J/cm2という条件のレーザー照射時に、最も線維芽細胞の増殖能及び遊走能が促進された。Western Blot Analysisでは、レーザーを照射した線維芽細胞においてAkt, ERK, JNKの活性化がみられた。また、それらのタンパク質をそれぞれ阻害すると、レーザー照射による細胞増殖能促進、及び遊走能促進が抑制され、またそれぞれのタンパク質の活性化も抑制された。 以上の結果から、炭酸ガスレーザーのLLLTにより、ヒト皮膚線維芽細胞の増殖能及び遊走能が促進されることが分かった。また、炭酸ガスレーザーのLLLTによる線維芽細胞の増殖能及び遊走能促進効果に、Akt, ERK, JNKといったシグナル伝達経路の活性化が大きく関わっていると示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度の本科研費の交付申請書に記載した、平成28年度の研究実施計画の内容は完了し、平成29年度に行う予定であった研究内容も一部完了した。 よって、現段階では本研究はおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度の本研究により解明した、炭酸ガスレーザーの低出力照射治療(LLLT)による皮膚創傷治癒促進効果に関し、in vivoの実験でもその作用を確認し、詳細な機序の解明を目指す。 具体的には、11週齢の糖尿病モデルマウス(BKS.Cg-Dock7m+/+Leprdb)を用いて、両側背部に1個ずつ直径1cm大の皮膚欠損を作成する。これに対して左をレーザー非照射群、右を炭酸ガスレーザーLLLT群としてモデルを作成する。モデル作成から数日後、H.E.染色や抗vimentin抗体をはじめとする免疫組織染色法を用いて、炭酸ガスレーザーのLLLTが糖尿病モデルマウスの線維芽細胞に与える影響を明らかにする。 これらの実験により本研究は、炭酸ガスレーザーのLLLTによる皮膚創傷治癒促進効果に関し、in vitro, in vivoの両側面からの詳細な作用機序の解明に繋がるものと考えられる。
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Causes of Carryover |
平成28年度に行った実験はおおむね順調に実施され、必要最小限の使用で賄えた。また一部の実験においては、当研究室が以前より所有していた実験器具及び材料を使用したため、実験物品の新規購入分の資金を使用しなかった。 以上の理由により、次年度使用額が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、培養細胞を使用したin vitroの実験に加えて、糖尿病モデルマウス等の動物を使用したin vivoの実験を追加する。実験動物の購入、飼育に必要な資金として、またその他の動物実験に必要な実験器具や実験材料等の購入に使用する予定である。
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