2016 Fiscal Year Research-status Report
ヒトiPS細胞由来の培養細胞を用いたプロポフォール注入症候群の機序の解明
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16K20380
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
伊藤 裕之 東京医科歯科大学, 医学部附属病院, 助教 (80595554)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | プロポフォール / アポトーシス |
Outline of Annual Research Achievements |
2016年度は、ヒト人工多能性幹細胞(iPSC)由来神経細胞を用いて、プロポフォールが培養神経細胞に与える影響を検討した。 ヒトiPSC由来神経幹細胞を14日間培養し、神経細胞に分化させたものを使用した。神経細胞への分化は、βⅢ-Tubulin と Doublecortinの発現により評価した。プロポフォール(2,10,50μg/ml)を48時間曝露した後、ATP産生、NAD+/NADH比、生細胞プロテアーゼ活性(細胞の生存率の指標)、カスパーゼ3/7活性(アポトーシスの指標)を測定した(各群n=4)。統計学的検討にはDunnettの多重比較検定を行い、P<0.05を有意とした。 今回用いた細胞は、培養14日目に、βⅢ-Tubulin と Doublecortinがともに発現陽性であった。10μg/ml群で、有意に生細胞プロテアーゼ活性の低下や細胞あたりのカスパーゼ3/7活性の上昇が起き始め、ミトコンドリアの活性を反映するNAD+/NADH比は24.6%(P<0.05)低下した。さらに50μg/ml群では、NAD+/NADH比は40.1%(P<0.01)、ATPは17.9%(P<0.05)それぞれ低下し、ミトコンドリアでのNADH利用障害とそれに並行するATP産生の低下を生じたと考えられる。生細胞プロテアーゼ活性 15.9%低下(P<0.01)、カスパーゼ3/7活性 24.0%上昇(P<0.05)も認められた。電子顕微鏡所見では、対照群に比べ、プロポフォール50μg/ml群において、ミトコンドリア分裂像やそれらを貪食するようなオートファゴソーム像、細胞質内の空胞化を認めた。 ヒトiPSC由来神経細胞において、プロポフォールの高濃度かつ長時間の曝露により、電子伝達系の抑制によるミトコンドリア機能障害およびアポトーシスによる細胞毒性が誘起されることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度はヒト人工多能性幹細胞(iPSC)由来神経細胞を用いて、プロポフォールが培養神経細胞に与える影響を検討し、一通りまとまった結果を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2016年度に得られた結果を論文発表としてまとめる方針とし、追加実験等が必要となった場合には随時施行する。
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Causes of Carryover |
2016年度における研究を終了した段階で、若干の端数として残高が発生したため、2017年度の試薬購入資金として、繰越すこととした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
培地および細胞培養に必要な培養容器等の購入費用に充てる予定である。
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Research Products
(2 results)