2017 Fiscal Year Research-status Report
災害現場におけるクラッシュ症候群の新規重症度判定法の樹立と初期治療戦略の開発
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16K20397
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Research Institution | Josai University |
Principal Investigator |
村田 勇 城西大学, 薬学部, 助手 (80610667)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | クラッシュ症候群 / アイシング / アドレナリン / 治療法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、瓦礫の下敷きになったヒトたちが生じるクラッシュ症候群の治療が、病院搬送後に行われることで手遅れとなるケースを改善するため、現場で所持する医薬品などのなかで適切な治療を開発することを目的としている。2年目の研究結果の概要は、以下のとおりである。 (1)アイシングの有効性について:ラットのクラッシュ傷害部にアイシング処置を5、30、60、180分間実施した。筋肉をアイシングすることで血流の抑制は可能であるがクラッシュ部に走行する血管自体の収縮がアイシング処置終了後から回復するため、カリウムが全身に放出してしまい生存性を高めることはできなかった。加えて、180分間アイシングを実施するとカリウム放出は抑制されるものの、低体温症状やアシドーシス進行によって顕著な生存性の延長は得られないことも明らかとなった。つまり、アイシングを実施する際は、医療機関への搬送が3時間程度の場合にのみ適用可能な処置と考えられた。 (2)血管収縮剤(エピネフリン)の有効性について:クラッシュ症候群の急性期の死因は、高カリウム血症による心不全や低循環性ショックなどであるが、エピネフリン投与は一時的な血中カリウム値の低下や血圧上昇作用を示すものの、投与6時間後以降はアドレナリンのβ作用が心機能亢進を引き起こし、傷害部位の血流を上昇させてカリウムの全身循環への放出性を高めることで生存率が上昇しなかった。現在は、筋肉に分布する血管の収縮することを期待して傷害部位に投与した場合の有効性を調査している。 (3)平成28年度実施したクラッシュされた皮膚傷害に関連する一酸化窒素メカニズムの予備調査:クラッシュした皮膚は、物理的な傷害では説明できない時間依存的な傷害が明らかとなった。その原因は炎症反応の進行であることが予想された。炎症性サイトカインは著しく上昇し一酸化窒素メカニズムにも著しい変化を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アイシング処置ならびにアドレナリン投与は、血管収縮作用によって傷害部位からのカリウムの全身循環への放出抑制によって生存性を高めると予想したが、それぞれの処置には有効性がある反面で副次的な作用などによって血中カリウム値が高くなるり、その理由を明らかにするために時間を要したが概ね順調に進行している。アドレナリン投与を有効的な方法とすべく障害部位に投与するなどして、全身性の副次反応を低下可能な投与経路について現在検討中である。一方、炎症性メカニズムを調査する過程で皮膚免疫の低下を示すような知見が得られ、当初予定していない事案であるが平成30年度において解明する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
アドレナリンの副次的作用を減らし有効性を保つ投与経路の決定を行っている。同時に、3年目に計画している一酸化窒素メカニズムの解析ならびに本研究を実施したなかで明らかとなったクラッシュした皮膚免疫機能の低下について証明する予定である。
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Causes of Carryover |
直接経費の一部を使用せずに次年度使用額となった理由は、実験結果の再現性が高く、当初購入予定であったヘアレスラット使用数を減らすことができたためである。その分を次年度に予定している一酸化窒素や皮膚免疫メカニズム解明に使用する予定である。
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