2016 Fiscal Year Annual Research Report
炎症下の脂質メディエーター(Resolvin D2)代謝と臨床経過への影響
Project/Area Number |
16K20398
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Research Institution | Kyorin University |
Principal Investigator |
井上 孝隆 杏林大学, 医学部, 助教 (80468454)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 脂質 / 栄養学 |
Outline of Annual Research Achievements |
【目的】Resolvin D2 (RvD2)の投与にて、侵襲後の二次的臓器障害を予防し治療成績が改善される等、様々な動物実験の報告がなされている。RvD2はDocosahexaenoic acid (DHA)の代謝産物であるが、近年のある重症外傷患者を対象とした研究結果によると、予後不良群においてDHAからRvD2への代謝経路が抑制されていたとの報告がなされ、炎症下ではDHAから効果的にRvD2へ代謝されていない可能性が示唆された。そこで今回申請者は、熱傷・外傷後のICU入室患者において血中のRvD2濃度を測定し、その治療経過や予後と比較検討を行う研究を行った。 【実施計画】RvD2の血中濃度を測定するために、液体クロマトグラフィー(LC-MS/MS)を使用した。初年度は、RvD2(Cayman Chemical)と内部標準物質(d5-RvD2, Cayman Chemical)の濃度を変更し、LC-MS/MSでの発現を確認する実験を行った。 【結果・考察】10ng/mLの濃度ではRvD2の明らかなピークを認め、同定が可能であったが、1ng/mLの濃度へ希釈すると、その発現はノイズの3倍程度まで減弱してしまった。ヒトにおける健常時のRvD2血中濃度は、25-45pg/mLと報告されている。本施設でのLC-MS/MSを使用したRvD2測定では、pg/mL単位まで希釈することは困難であると推察された。 RvD2の別の測定手段として、ELISAキット(Cayman Chemical)を使用する方法がある。このキットでは、患者血液中のRvD2濃度をELISA法にて測定することが可能であり、pg/mL単位での測定が可能である。これらの測定で得られた患者血液中のRvD2濃度は、DHAの摂取量だけではなく、患者背景や合併症、ICU滞在期間、予後等の臨床経過とも比較検討を行う。
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