2016 Fiscal Year Research-status Report
低酸素シグナルによるT細胞分化調節を介した歯周病増悪メカニズムの解明
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16K20416
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Research Institution | Matsumoto Dental University |
Principal Investigator |
堀部 寛治 松本歯科大学, 歯学部, 助教 (70733509)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 歯周病 / サイトカイン |
Outline of Annual Research Achievements |
口腔内環境の健康はQOL維持・向上において非常に重要な課題の1つである。歯周病は歯喪失を引き起こす最大の要因である。創傷、感染などが起こると組織は一過性または慢性的に低酸素状態に陥いる。本研究は、炎症時に発現が亢進する低酸素誘導性因子(hypoxia-inducible factor:HIF)と、炎症性サイトカインIL-17の産生細胞であるヘルパーT(Th)細胞の一種、Th17細胞の浸潤、分化について解析を行うことを目的としたものである。 8週齢の野生型マウス上顎第二大臼歯の歯肉縁部に絹糸を結紮し、歯周病の発症を誘導した。一週間の結紮後、上顎骨を採取し、4%パラホルムアルデヒドでの固定後、マイクロCT装置により、骨吸収量の計測を行った。吸収量の平均は最も吸収が激しい頬側遠心咬頭部直下で301.93(±193.15)μmに達する。また、結紮部位のパラフィン切片を作成し、T細胞マーカーである抗CD4抗体および、抗IL-17抗体を用いて、T細胞およびIL-17陽性細胞の局在を検討した。その結果、これらの細胞が該当歯の歯槽骨周囲歯肉および歯根膜部に局在を確認した。 次に、炎症性サイトカインであるIL-17AおよびIL-17FのそれぞれのKnockout (KO)マウスに野生型マウスと同様の歯周病誘導を行い、マイクロCT撮影により、骨吸収量を計測した。その結果、IL-17A KOマウスの頬側遠心咬頭直下の骨吸収量の平均値は430.86(±100.76)μm、IL-17F KOマウスでは239.4(±174.05)μmとなり、野生型マウスに比べIL-17A KOマウスでは骨吸収量が増加しており、IL-17Aが歯周病感染において免疫防御的に働いている可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成28年度では、主にマウス口腔内への絹糸の結紮による歯周病モデルによる骨吸収の解析を行った。しかし、実験当初は手技が未熟であり、設定していた実験期間中に結紮糸が切れてしまい失敗するなどがあり、病態を解析するのに不適当であった。その対策として、他大学の同様の実験を行っている研究者の方の助言を受けて、安定した骨吸収の結果が得られるようになった。 また、IL-17AおよびIL-17FのKOマウスを東京理科大学生命医科学研究所の岩倉洋一郎先生より6月に供与いただいたが、そのマウスを安定した実験可能匹数に繁殖させるのに2017年の1月まで時間がかかってしまった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究方針としては、歯周病誘導マウス上顎臼歯のパラフィン切片に、抗Hif-1α抗体を用いた免疫組織化学的手法により、歯周組織におけるHif-1α発現および核内移行細胞の局在を形態学的に明らかにする。また、同様の実験をIL-17A KOマウスおよびIL-17F KOマウスでも行い、これらサイトカインとHif-1αの発現変化との関連を調べる。 また、遺伝子解析手法により歯周病モデルマウスにおけるHif-1αの関連遺伝子およびIL-17関連遺伝子の変化についても解析を行い、同様にIL-17A KOマウスおよびIL-17F KOマウスでも同様に行う。 また、培養系において歯周組織を低酸素下で培養を行う。その後、炎症性サイトカインやケモカインのタンパク量や遺伝子発現の変化の解析を行い、低酸素と歯周病進行との関連についての詳細な解析を行う。
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Causes of Carryover |
消耗品の購入金額がキャンペーン期間中で定価から割引した金額であったため、差額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
消耗品の購入に使用する予定である。
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