2017 Fiscal Year Research-status Report
RANKL結合ペプチドを用いた口蓋裂部における骨再生の検討
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16K20419
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
加藤 玄樹 東京医科歯科大学, 歯学部, 非常勤講師 (00770231)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 上顎骨骨造成 / BMP-2 / ペプチド / 注射による骨造成法 |
Outline of Annual Research Achievements |
口蓋裂患者は、顎裂部を塞ぐために幼い時から成人に至るまで何度も手術を繰り返すため、手術の侵襲をなるべく避ける骨造成法の開発が望まれている。我々は最近、BMP-2とRANKL結合ペプチドとをゼラチンハイドロゲルをキャリアーとして組み合わせて粘膜下に注射し、骨を造成させる新規骨造成法を開発した。この注射による骨造成法は、BMP-2タンパクの用量を抑え、炎症などの副作用を軽減させた状態で骨形成促進ペプチドを併用することにより、担体の大きさよりも大きな骨が造成できる画期的な方法である。上顎骨に応用した場合、骨面に対して高さあるいは幅を増やすことができ、臨床応用が期待されている。しかし、実際の臨床応用を鑑みた場合に、まだまだ越えなければならない問題が多くある。 一昨年度は注射法により形成された骨が母骨と一体化しているか否かを、3本の蛍光ラベルを安楽死前に時間を違えて打ち込むことにより、明らかにできた。昨年度は、注射による骨造成法をを臨床応用するために、越えなければならない問題のひとつである「新生骨がどの程度維持されるか」という問題に対して解答を与えるために、昨年の実績報告書では頭頂骨欠損モデルを用いて、検証を行うとしたが、やはり注射による骨造成法こだわり、上顎に注射した後、10週間の経過をマウスを生かしたまま観察できるin vivoμCTを用いて観察した。その結果、10週間ではまだ新生した骨が無くなることはなく、維持されていることを確認した。全体の大きさはすこし減少しているように見受けられた。 生理的な骨形態からかけ離れた新生骨はいずれは吸収されなくなっていくと思われるが、インプラントを埋めるなど新生骨への力の伝達が変われば、維持される期間や維持される新生骨の量も変わってくると思われた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
口蓋裂患者の顎裂部を塞ぐために行われている、自家骨移植に変わる注射による骨造成法の確立が本研究の目的である。このため、注射法により骨が造成されたあとに生理的な力がかかれば、骨量は維持されると考えている。ただ、口蓋裂患者のモデル動物の確立が難しく、本研究では注射法により造成した骨の性質を調べることに重点を移して検討を重ねている。 この2年間、注射法により造成される新生骨の母骨との一体化を調べ、長期予後を調べてきた。in vivo μCTを用いたことにより、使用動物の大幅な削減が実現した。経時的に新生骨の形の変化がリアルタイムに画像化されるこのシステムを用いて10週間までの経時的変化を観察することができた。 問題として浮かび上がってきたことは、注射をする位置に骨が作られる場合とそうでない場合があることであった。理由として、BMP-2と骨形成ペプチドとが足場材料として用いる粒子状のゼラチンハイドロゲルに含浸する場合とそうでない場合があったためであった。つまり、足場材料の保存状態により含浸される量に差が出てしまい、注射材料を混ぜたあとにゲルではなく、水溶液に近い場合は、注射した位置に骨再生材料がとどまらず、広範囲に骨を造成してしまうことが明らかとなった。 問題点が見つかったので、少し遅れているとしたが、注射法による骨造成法の臨床応用に向けて問題点が見つかり、順調な進み具合ともいえる。
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Strategy for Future Research Activity |
進捗状況にも記載したが、足場材料への骨再生材料の含浸度合いを一定にすること、またゲル状になりすぎると注射で吸えなくなるため、ある程度の流動性が必要であることなど、注射による骨造成法を臨床応用するためには、まだ越えるべき壁がいくつか見つかってきた。 今年度は、足場材料として用いているゼラチンハイドロゲル粒子の粒子径を現在用いている20μmよりも小さくしたものを京都大学田畑泰彦教授から提供していただき、母骨とのリモデリング、あるいは長期予後に関して、現在使用しているものより使いやすいかどうかを検討する。 また、ミニインプラントを立てて、母骨にかかる生理的な力をインプラントを介して伝わるようにすれば、たとえ咬合していていなくても、注射により造成した新生骨の長期予後はインプラントを埋入しない場合と比べて良好であることが予想される。今年度は上述の足場材料の検討に加えて、注射による骨造成法をより臨床応用に近づけるために、新生骨にインプラントを埋入した実験を行う予定である。
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