2016 Fiscal Year Research-status Report
口腔癌治療薬の口腔上皮系正常細胞に対する傷害性の克服に関する基礎研究
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16K20441
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
生 宏 東北大学, 歯学研究科, 大学院非常勤講師 (60771904)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ドキソルビシン / ヒト口腔正常ケラチノサイト / レスベラトロール / ポリフェノール / 細胞損傷 / 細胞死 / 抗酸化作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
口腔扁平上皮癌細胞の治療に使われているドキソルビシンが、培養細胞系で、ヒト口腔正常ケラチノサイト(HOK)を口腔扁平上皮癌細胞(HSC-2)と同程度に傷害を与えること、そして、ポリフェノールの一種であるレスベラトロールが、それを軽減することが明らかにされた。ドキソルビシンの口腔正常上皮系細胞に対する副作用を減弱する方法を確立することの重要性を示している。本研究は、ドキソルビシン誘発性の細胞傷害を克服する方法を考案するため、ドキソルビシンによりヒト口腔正常ケラチノサイトに誘導される細胞死のタイプを特定する。ドキソルビシン単独処理でHOKに誘導される細胞死のタイプの特定レスベラトロール添加により、ドキソルビシンの安定性、細胞内への取り込み、ドキソルビシン誘発性細胞死の抑制、細胞周期の停止、抗酸化作用および細胞保護に関与する可能性のあるオートファジーの誘導について検討する。ステップ1はドキソルビシン単独処理で ケラチノサイトに誘導される細胞死のタイプの特定。ステップ2はレスベラトロールによるドキソルビシン誘発性ケラチノサイト細胞死の抑制のメカニズムの検討。ステップ3はドキソルビシンの細胞傷害性が、他の口腔内における種々の上皮系正常細胞や炎症性細胞においても同様に観察されるかを調べ、一般性があるか否かを検討する。本研究システムを用いて、広く天然界より、ドキソルビシンの副作用を軽減する物質を探索し、臨床応用の可能性について総括する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度所属変更したので、最初は細胞・培地・試薬の購入や、設備などを備えることを時間がかかったが、その後計画を順調に実施し、目標を達成した。まず、再現性の確認するため、新購入(他のロット)のヒト口腔上皮系正常ケラチノサイト(HOK)および口腔扁平上皮癌細胞(HSC-2)を用いても同様な結果が得られるかを確認していた。現在までのところ、細胞毒性実験の結果によりHOKをドキソルビシン濃度に依存してHSC-2と同程度に傷害を与えること再現された。また、レスベラトロール添加により、ドキソルビシンはHSC-2に対する傷害性は促進されたが、ドキソルビシンによりHOKに誘導される細胞損傷に対して、レスベラトロールの細胞保護効果は弱いことをわかった。細胞死解析により、ドキソルビシン添加によりHOKをHSC-2とほぼ同じ傾向のアポトシスを誘導させた。現在、詳細な細胞周期解析を進めている。以上のような理由により、現在までの達成度としては、当初計画から最初は若干の遅れが見られるものの、概ね当初の計画どおりに進展していると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
正常細胞およびがん細胞ドキソルビシン誘導性細胞傷害のメカニズムの解明や、レスベラトロール(ほかのポリフェノール)の細胞保護効果メカニズムについて詳細に検討する必要がある。今後、酸化ストレスの誘導に関し、レスベラトロール濃度を変化させることでがん細胞に対する傷害性は促進の変化や正常細胞に対する保護作用の影響を解析する。また、超高感度質量分析(LC-MS/MS)解析により細胞代謝物や細胞内への取り込む試薬を同定する。さらに、HOK および HGF 細胞は、IL-1β および LPS で炎症(PGE2, IL-6, IL-8, MCP-1 の産生亢進)を惹起できるが報告されている。この炎症系においても、ドキソルビシンで増悪し、レスベラトロールで保護されるか否かを検討する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由としては、初年度ということもあり、研究成果が学会発表の水準にまでは達しなかった部分があり、学会の出張を行わなかったため、学会旅費が発生しなかったことがあげられる。これらの金額と次年度以降に請求する研究費を合わせた使用計画としては、学会への参加のための旅費に使用すること、論文投稿の費用、などを計画している。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
細胞培養するための培養関連試薬、培養細胞を用いた細胞生物学的な解析(細胞内活性酸素蛍光測定キット、細胞内への取り込み物質の同定)のための試薬を購入する。以上の消耗品試薬類は比較的高額なものが多いために、本年度繰り越しとなった金額と来年度計上額との合計金額分の消耗品試薬類の支出が見込まれる。また、平成29年度に本科研費の成果を学会で発表、また論文投稿を予定しており、別刷り代をはじめとした投稿に際した費用の支出や論文投稿による追加実験の消耗品費用として使用する予定です。
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[Book] Nanostructures for Oral Medicine:Therapeutic potential of solubilized nanolignin against oral diseases2017
Author(s)
Sakagami H, Sheng H, Yasui T, Fukuchi K, Oizumi T, Ohno H, Yamamoto M, Fukuda T, Kotohda K, Yoshida H, Kanamoto T, Terakubo S, Nakashima H
Total Pages
印刷中
Publisher
Elsevier