2016 Fiscal Year Research-status Report
Wnt5aシグナルによる効果的な歯根膜組織再生を用いた次世代型意図的再植法の開発
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16K20458
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
長谷川 大学 九州大学, 大学病院, 助教 (20757992)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ヒト歯根膜細胞 / Wnt5a / Ror2 / コラーゲン線維形成促進 / 石灰化抑制 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は、ヒト歯根膜細胞のコラーゲン線維形成促進ならびに石灰化抑制に特化したWnt5aシグナルを解明するため、Wnt5a関連レセプターのsiRNAを用いたノックダウンアッセイを行った。 我々は最近、当研究室にて樹立した“歯根膜細胞の表現型が顕著に高いヒト歯根膜細胞株”と“顕著に低いヒト歯根膜細胞株”を用いてマイクロアレイ解析を行い、Wnt5a関連レセプターの一つである“Ror2”が歯根膜細胞の表現型が顕著に高い細胞株において強発現することを見出した。そこで、本研究ではまずレセプターとしてRor2に着目し、Ror2がWnt5aのコラーゲン線維形成促進ならびに石灰化抑制に関与するかを検証した。その結果、siRNAによりRor2をノックダウンしたヒト歯根膜細胞株において、Wnt5a刺激により亢進したコラーゲン線維形成能が抑制され、また、Wnt5a刺激により抑制された石灰化能が亢進した。 以上の結果から、Wnt5aによるヒト歯根膜細胞のコラーゲン線維形成能の促進ならびに石灰化の抑制にはRor2が関与することが明らかになった。一方、その他のWnt5a関連レセプターである、Frizzled(Fzd)2、Fzd4、およびFzd5においても同様の解析を行ったが、Ror2のようなポジティブな結果は得られなかった。このことから、ヒト歯根膜細胞のコラーゲン線維形成促進ならびに石灰化抑制には、Wnt5a/Ror2シグナルが特異的に関与することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
siRNAを用いたノックダウンアッセイにより、レセプターRor2がWnt5aのコラーゲン線維形成促進ならびに石灰化抑制に関与することが明らかになった。その後、Wnt5aとRor2の結合を促進するCthrc1タンパクを用いてシグナルの活性化を図ったが、ポジティブな結果が得られなかったため、対応策として、使用しているヒト歯根膜細胞株(1-11細胞株)よりもRor2の発現が顕著に高い細胞株(2-23細胞株)を実験に用いることで、Wnt5aとRor2の結合の効率化を図ることとした。その結果、2-23細胞株を用いた解析により、Wnt5aによるヒト歯根膜細胞のコラーゲン線維形成促進能ならびに石灰化抑制能は、1-11細胞株よりも2-23細胞株を用いた方がより顕著であることが分かった。今後は2-23細胞株を用いて細胞内シグナル因子の探索および動物実験を進めていく。 以上のように、使用する細胞株を当初予定から変更し、それまでの研究結果の再現実験に時間を要したため、本研究課題の進捗はやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究により、ヒト歯根膜細胞のコラーゲン線維形成促進ならびに石灰化抑制に関与するWnt5aシグナルの解明(レセプターの探索)に成功している。今後は、このシグナルを活性化する細胞内シグナル因子の探索、さらにはその因子の促進剤を用いた動物実験を計画している。動物実験では、生体内での歯根膜組織再生に及ぼすWnt5aシグナルの影響を検討するため、マウス背部皮下細胞移植モデルを用いて、生体内における歯根膜組織形成能を検証していく。さらに、ラット意図的再植モデルを用いて、再植時における歯根膜組織再生能ならびにアンキローシス抑制能にWnt5aシグナルが及ぼす影響について検討する予定である。
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Causes of Carryover |
ヒト歯根膜細胞のコラーゲン線維形成促進ならびに石灰化抑制に関与する細胞内シグナル因子の探索に際して、実験プランの変更を余儀なくされたため、当初当該年度内に予定していた抗体アレイ解析が実施できなかったから。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に抗体アレイ解析を行い、細胞内シグナル因子の探索を行っていく。また、そのシグナル因子の促進剤を用いたin vitroおよびin vivo実験も予定している。
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Research Products
(6 results)