2016 Fiscal Year Research-status Report
GDNFの持続的刺激が象牙芽細胞・骨芽細胞の生存と炎症応答に及ぼす影響の解明
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16K20460
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Research Institution | Kyushu Dental College |
Principal Investigator |
西藤 法子 九州歯科大学, 歯学部, 助教 (40735099)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 歯学 / グリア細胞神経栄養因子 / 象牙芽細胞様細胞 / 細胞生存能 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々の研究グループは歯髄再生を目的とした研究の1つとして神経組織に対する栄養因子として神経細胞生存・分化に重要な役割を担っているグリア細胞由来神経栄養因子(GDNF)に着目している。GDNFは発生過程にある歯胚や炎症応答時の歯髄細胞・骨芽細胞など神経組織以外でも発現が確認されている。我々は現在、アルツハイマー病の治療技術として開発されたGDNF分泌カプセルを共同研究者(米国NsGene社)から供与を受け、歯髄・根尖歯周組織の再生誘導に関する研究を進めている。 今回、細胞血管内皮細胞増殖因子(VEGF)を分泌するヒト網膜色素上皮細胞(ARPE19細胞)を遺伝子改変しGDNFを大量発現する細胞を内部に封入したGDNF分泌カプセルとARPE細胞自体を封入したARPEカプセルを用いた。各カプセルは無血清培地(維持培地)中で維持され、細胞が産生した各因子はカプセル表面の微小孔から維持培地中へ放出される。 研究ではまず、ELISA法にてGDNFカプセルがGDNF及びVEGFを持続的に分泌すること、カプセルを0.1%FBS含有αMEM培地で維持すると各因子の分泌量は減少し、維持培地に戻すと回復することを確認した。 次に、低栄養状態(0.1%FBS)下で長期間に渡り象牙芽細胞様細胞(KN3細胞)を各カプセルの維持培地で刺激したところ、KN3細胞の生存は維持されALP活性も保持していることが確認された。両カプセル間で生存細胞数に差は認められなかったが、カプセルから分泌されるVEGFの阻害によりARPEカプセル刺激群では生存細胞数が減少しGDNF分泌カプセル刺激群では減少しなかった。以上の結果からGDNF単独でKN3細胞の長期生存が維持されることが示唆された。 本研究の結果は、GDNF分泌カプセルは象牙芽細胞様細胞の低栄養状態下における長期生存に有用であることを示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度は細胞血管内皮細胞増殖因子(VEGF)を分泌するヒト網膜色素上皮細胞(ARPE19細胞)を遺伝子改変しGDNFを大量発現する細胞を内部に封入したGDNF分泌カプセルとARPE細胞自体を封入したARPEカプセルを用い、ELISA法にてGDNF分泌カプセルからはVEGFとGDNFが持続的に分泌されていること、カプセルを0.1%FBS含有αMEM培地で維持すると各因子の分泌量は減少し、本来の維持培地に戻すと分泌量が回復することを確認した。 次に、象牙芽細胞様細胞(KN3細胞)の生存実験ではカプセル維持培地を刺激として用い、低栄養下で各カプセルの維持培地を加えた状態でKN3細胞を長期間(7日間及び14日間)培養した。その結果、生存細胞数は各カプセルの維持培地を加えなかったコントロールと比較して有意に多いことが明らかになった。また、刺激後のKN3細胞を1%FBS含有αMEMに戻し更に培養したところ、細胞増殖能とALP活性を保持していることが示された。 更に、各カプセルから分泌されるVEGFをVEGF受容体であるsoluble Flt1で阻害したところ、ARPEカプセルの維持培地で刺激した群では生存細胞数が有意に減少し、GDNF分泌カプセルの維持培地で刺激した群では細胞生存が維持されることが明らかとなった。以上の結果からGDNF単独でKN3細胞の長期生存が維持されることが示唆された。 今回、両カプセルから分泌されるVEGF及びGDNF分泌カプセルから産生されるGDNFが象牙芽細胞様細胞の長期生存に関与していること、GDNF分泌カプセルが象牙芽細胞を含む歯髄の再生誘導に有用であることが示された。これらの成果については、平成29年度中の学会発表と国際学術雑誌への投稿を予定している。
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Strategy for Future Research Activity |
H28年度は、細胞血管内皮細胞増殖因子(VEGF)を分泌するヒト網膜色素上皮細胞(ARPE19細胞)を遺伝子改変しGDNFを大量発現する細胞を内部に封入したGDNF分泌カプセルとARPE細胞自体を封入したARPEカプセルを用い、カプセルから長期的に各増殖因子が分泌されることをELISA法で確認した。次に、カプセルの維持培地を用いて、象牙芽細胞様細胞(KN3細胞)の長期生存に及ぼす影響をトリパンブルー染色で検証し、各カプセルから分泌されるVEGF及びGDNFが象牙芽細胞様細胞の長期生存を維持することを明らかにした。更に、VEGF阻害剤であるsoluble Flt1を用いて、VEGFだけではなくGDNF単独でもKN3細胞の細胞生存を延長する可能性を明らかにした。 H29年度はこれまでの実験結果をより確実なものとするため、GDNF阻害剤を用いた実験を行う。また、各カプセルによる象牙芽細胞様細胞の長期生存メカニズムを明らかにするため、細胞内シグナル伝達系に関わる各分子の活性化及び細胞生存や分化に関わる分子の発現を検証する予定である。更に、in vivoの実験系を進めるとともに、根尖歯周組織に存在する歯根膜細胞、セメント芽細胞、及び骨芽細胞等の長期生存への影響を検討していく。以上の研究から得られる成果については積極的に学会発表や英文雑誌への投稿を検討する予定ある。
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Research Products
(2 results)