2016 Fiscal Year Research-status Report
新規リン酸カルシウム系歯内療法材料の開発と生体反応の分子基盤構築
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16K20473
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Research Institution | Asahi University |
Principal Investigator |
長谷川 智哉 朝日大学, 歯学部, 助教 (80761585)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | リン酸カルシウム / 直接覆髄 / 生体親和性 / 硬組織誘導 / 歯髄由来幹細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、ラット露髄モデルへの直接覆髄による材料周囲組織の応答解析とマウス皮下組織埋入実験および各種セメントに対する培養細胞の応答解析行い以下の結果を得た。 ①ラット露髄モデルへの直接覆髄実験として、8週齢の雄性Wistarラットの右側上顎第一臼歯を露髄させ、2Mリン酸二水素ナトリウム水溶液を練和液としたα-TCP/Te-CP 混合セメントあるいは比較対照としてMTAセメントや水酸化カルシウム製剤を填入する群を作製し覆髄部での歯髄組織の反応、および被蓋硬組織形成過程でどのような細胞が機能しているかを経時的に切片に作製し、組織化学的・免疫組織化学的解析を行ったところ、覆髄後7~14日で、α-TCP/Te-CP 混合セメント覆髄群に被蓋硬組織形成がみとめられ、列をなす象牙芽細胞様細胞が観察された。さらに、マウス皮下組織への埋入群も作製し、組織応答を検討する予定である。 ②マウス皮下組織埋入モデルに先立って、歯髄由来幹細胞を用いた培養系での評価を行った。ところ、水酸化カルシウム製剤からの溶出物を含む培地はpH8.8~9.0となり細胞属性、細胞増殖阻害を示したが、α-TCP/Te-CP混合セメントからの溶出物を含む培地はMTAセメントと比較しても細胞増殖を阻害せず、両者ともに細胞毒性を示さなかった。また、セメントからの溶出物を含む培地で培養した細胞を経時的に固定、あるいは総RNAを回収しており、骨芽細胞や象牙芽細胞等への分化の指標としてマーカー遺伝子の発現解析を行う予定である。そのうちの、固定した細胞を用いてアルカリホスファターゼ(ALP)活性染色を行ったが、α-TCP/Te-CP 混合セメントで経時的に染色性が増加し、硬組織形成細胞への分化誘導能を有することが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
α-TCP/Te-CP 混合セメントの細胞親和性が、近年評価の高いMTAセメントと同等であり、骨芽細胞への分化の指標となるALPの活性上昇も促進したことから直接覆髄材として有望である見通しを得たため。また、マウス皮下への埋植実験は、in vitroでの評価を前倒しで行ったため次年度に持ち越したが、in vitroでの結果を解析の指標とできるため全体としては順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の結果をふまえ、引き続き、各種セメント存在下での周囲組織由来細胞の動態解析を行うため、歯髄由来幹細胞と線維芽細胞を用いて骨芽細胞や象牙芽細胞への分化の指標となる石灰化の度合いを検討し、mRNA発現変化との相関性を確認する。また、石灰化誘導の有無による種々の細胞の分化特性の解析も行い、由来組織の異なる細胞の歯内療法材料に対する応答性について明らかにするととも、セメントからの溶出成分の同定を蛍光X線解析にて行う予定である。 さらに、セメント存在下での細胞応答に関与するエピジェネティック因子のスクリーニングとして、DNAの脱アセチル化解析、microRNA等のエピジェネティックな因子の探索を行うほか、遺伝子の転写制御、細胞の分化調節に重要なヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)の関与を阻害剤の1つであるトリコスタチンA (TSA)を用いて評価し、由来組織および適用するセメント材料によって、同酵素の阻害効果の違いを検討する。そして、TSA阻害による骨芽細胞分化や象牙芽細胞分化に関わる因子の発現レベルの変化を解析する。
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Research Products
(3 results)