2017 Fiscal Year Research-status Report
要介護高齢者の口腔インプラント予後評価と上部構造維持様式変更の有効性
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16K20498
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
黒崎 陽子 岡山大学, 大学病院, 医員 (90759664)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 口腔インプラント / 要介護高齢者 / フレイルティ / 無作為割付クロスオーバー試験 |
Outline of Annual Research Achievements |
患者データベースより,当科で口腔インプラント治療を受けた現在年齢75歳以上の高齢者は,2015年時点で195名(平均年齢80.4歳 ,男性87名,女性108名)であり,このうち,88名(45%)の患者は,1年以上来院が途絶えていることがわかった.これらを対象に電話連絡し,要支援・要介護状態のインプラント患者の抽出を聞き取り調査にて開始した.その結果,現在までに6名の要支援・要介護状態のインプラント患者から研究協力の同意が得られ,検診を行った.6名の研究実施対象者には臨床診査プロトコルに従い,口腔衛生状態,インプラント体周囲の炎症・骨吸収,上部構造のトラブルの有無などの臨床診査データの収集を行うとともに,聞き取り調査により栄養摂取状況,日常生活動作の状況,全身状態,介護環境などの把握を行った. さらに,日本歯科大学との共同研究が実現したため,日本歯科大学付属病院口腔インプラント診療科で口腔インプラント治療を受けた75歳以上の患者のうち,要介護認定を受けている高齢者,および日本歯科大学口腔リハビリテーション多摩クリニックにて訪問歯科治療を受けており,口腔内にインプラント体を有する65歳以上の要介護高齢者も対象に加えた.その結果,現在までに8名の要支援・要介護状態のインプラント患者から研究協力の同意が得られ,同様の検診を行った. また本研究では,当科関連病院と連携を図り,当科関連病院にて訪問歯科治療を受けておりインプラント体を有する65歳以上の要支援・要介護高齢者も研究対象者である.現在までに1名の研究対象者を確認しており,今後研究参加の同意を得た上で検診を行う予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日本歯科大学との共同研究が実現したたことで研究実施対象者数が増え,さらに当科関連病院と連携を図ることで,今後もさらなる対象者の確保が期待できるため.
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Strategy for Future Research Activity |
1.引き続き,要支援・要介護状態のインプラント患者のサンプリングを行う.さらに,健康・虚弱状態のインプラント患者を構築済みの患者データベースより抽出し,口腔衛生状態,栄養摂取状態や全身状態の把握を行う.そして要支援・要介護状態のインプラント患者と合わせ,各健康ステージにおいて高齢者の口腔インプラントにどのような問題が生じているかを把握する.また,対照群としてインプラント患者と基礎情報をマッチングした非インプラント患者の抽出も行う. 2.1年ごとに追跡調査を行い,全身状態の変化とともに,口腔インプラント周囲の清掃状態や炎症,口腔ケアの負担などがどのように変化するかを調査する.また,介護負担の増大や低栄養の発生などをエンドポイントとし,交絡の影響を加味したコックス比例ハザード解析を行い,口腔インプラントの有無やがリスク因子となるかを検討する. 3.研究参加者のうち,9歯以上の多数歯欠損に固定性の口腔インプラント上部構造を装着している虚弱・要支援・要介護高齢者を対象とし,上部構造を固定性から可撤性に変更する無作為割付クロスオーバー試験を行う.そして,上部構造を固定性から可撤性へ変更することで介護負担が軽減するか,口腔衛生状態や全身状態,栄養摂取へどのように影響するかを検証する. 4.得られた研究結果をまとめて解析し,学会発表を行う予定である.
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Causes of Carryover |
インプラント上部構造の維持様式変更の効果に関する無作為割付比較試験を予定しているが,対象となる9歯以上の多数歯欠損に固定性の口腔インプラント上部構造を装着している虚弱・要支援・要介護高齢者が現時点では少なく,まだ開始できていないため. 今後も継続してインプラント体を有する虚弱・要支援・要介護高齢者のサンプリングを行うことで,無作為割付比較試験の対象者を増やすともに,予想外に対象者数が少なく2つのグループに分けて比較することが困難な場合には,全対象に介入を行い,介入前後のインプラント周囲の炎症所見,口腔ケアの介護負担,栄養状態等を比較するシンクグルアームの介入研究に変更し実施する.これらの介入研究の調査費として,またインプラント上部構造作製費として経費を使用する.
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