2016 Fiscal Year Research-status Report
血管内皮前駆細胞移植によるBRONJの病因解明と標的分子同定による新治療法の開発
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16K20510
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
中島 和慶 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 助教 (40707246)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 血管内皮前駆細胞 / ビスフォスフォネート / 顎骨壊死 |
Outline of Annual Research Achievements |
ビスフォスフォネート製剤(BP)関連顎骨壊死(BRONJ)は難治性の硬軟組織疾患であるが、確定的な原因が不明であることから治療法が確立されていない。その原因の1つに顎骨壊死を呈する動物モデルが確立されていないことが挙げられるが、申請者はこれまでの研究で100%の確率で抜歯窩治癒不全と顎骨壊死を発症するモデルマウスを開発し、さらに、血管内皮前駆細胞を主体とする濃縮細胞群を移植することにより病態を改善できることを見出した。 すなわち、BRONJモデルマウスでは、抜歯2週後において抜歯窩は上皮で被覆されず壊死骨の口腔内への露出を認めたのに対し、血管内皮前駆細胞を主体とした濃縮細胞群を移植したBRONJモデルマウスでは、抜歯2週後において抜歯窩は上皮で完全に被覆されることを明らかにした。 さらに、その機序を明らかにするために組織学的検索を行ったところ、血管内皮前駆細胞を主体とした濃縮細胞群移植を行ったマウスでは、抜歯窩内の炎症性細胞浸潤が著しく減少し、周囲軟組織におけるコラーゲン線維が増加することを明らかにした。また、免疫組織学的検索から、抜歯窩軟組織における血管数とM2マクロファージ数の著名な増加を認め、遺伝子発現解析から抜歯無難組織における炎症性サイトカインの発現の減少を認めた。 以上から、血管内皮前駆細胞を主体とする濃縮細胞群移植により抜歯窩周囲軟組織の血管数が増加することでM2マクロファージの動員が促進された結果、炎症を抑制する環境が構築されると同時に細胞外基質の産生に伴う上皮被覆が促進されることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度に計画された実験計画と解析は達成されており大きな遅滞はないため、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度は計画通りに研究を遂行できており、得られた研究実績をさらに詳細に解析するための研究計画の大幅な変更は現時点では必要ない。 初年度の研究実績から細胞移植がBRONJに対して治療効果を示すことが示唆されたが、次年度では移植細胞の局在を解析し、移植細胞がもつ全身と局所への影響を明らかにすることを目的としている。本研究計画の遂行により、BRONJの病因解明と治療法の確立に大きく貢献できると考えられる。
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