2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K20520
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Research Institution | Kanagawa Dental College |
Principal Investigator |
三宅 香 神奈川歯科大学, 大学院歯学研究科, 助教 (70709229)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 抗菌活性 / 抗菌性シランカップリング剤 |
Outline of Annual Research Achievements |
急速に超高齢化が進む我が国では口腔常在菌と全身疾患の関連が注目され,口腔ケアの重要性に対する認識の高まりから歯の喪失率は減少傾向を示しているものの,未だ高齢者の多くが義歯を使用しており,そのケアが必ずしも行き届いていないのが現状である.高齢者や要介護者は慢性疾患の罹患率が極めて高く,日和見感染により難治性感染症を惹起することがあり,口腔に常在する細菌による呼吸器感染症もこれにあたる.我々の研究室では,歯質ならびに修復物や補綴装置表面の表面自由エネルギーを低下させ,かつ耐酸性を付与することができる種々な表面改質剤を開発し,プラークの付着,形成ならびに歯質の脱灰を抑制して齲蝕および歯周疾患を予防することを目的とした研究を進め,その成果を報告してきた.本研究ではこの技術を応用し,歯面や修復物,さらには義歯床などの補綴装置表面に塗布,あるいは高分子材料に添加して抗菌効果をもたせることによりプラークの付着を抑制して,高齢者のみならず国民の口腔健康を改善,および増進することに寄与することである. 本年度は,新規合成した第4級アンモニウム塩の構造を有する抗菌性シランカップリング剤N-allyl-N-decyl-N-methyl-N-trimethoxysilylpropyl- ammonium iodide(以下10-I)を添加した新たな抗菌性高分子材料の開発を目的とし,10-Iを既存の歯科材料表面に添加し,カンジダ菌に対する抗菌効果の有無を抗菌活性により検討・評価を行った.その結果,10-Iを添加した群は,対照群(無添加)と比較して生菌数が有意に低い値を示した(p<0.05).したがって,10-Iを既存の歯科材料に添加することにより義歯性口内炎の予防のみならず,誤嚥性肺炎などの全身疾患の併発の抑制,あるいは予防効果が発揮されることが示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究において,新規材料である10-Iを使用しているため,合成に時間を要し,大量生産が困難な状況である.そのため,合成や添加に時間がかかり予定通りに実験が遂行できない状況であった.H29年度実施予定であった単一菌に対する抗菌効果をカンジダ菌にて実施し,抗菌効果があることを確認した.したがって今年度は,理工学的性質および走査型電子顕微鏡等による表面性状の検討,バイオフィルムに対する抗菌効果を抗菌活性により評価を行う予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
H28年度に予定していた理工学的性質および走査型電子顕微鏡等による表面性状の検討を行う.本年度実施予定であった単一菌に対する抗菌効果は確認できたため,バイオフィルムに対する抗菌効果を,口腔内のプラークを最も良く再現し,固相表面に固着できるポリマイクロバイアルバイオフィルムモデルによって評価する.
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Causes of Carryover |
国際情勢不安定なため,国際学会を見送った。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
合成に必要な原材料や消耗品を当初予定よりも増やし購入する予定である。 研究成果の発表を広く行う予定である。
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