2016 Fiscal Year Research-status Report
新しいマクロファージ機能転換方法とインプラント周囲炎治療への応用
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16K20527
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Research Institution | Hiroshima International University |
Principal Investigator |
原田 佳奈 広島国際大学, 薬学部, 助教 (90609744)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ポリリン酸 / マクロファージ / リポポリサッカライド / CXCL10 / STAT1 |
Outline of Annual Research Achievements |
インプラント周囲炎はインプラント治療の長期的成功を阻害する大きな問題であるが、炎症により破壊されたインプラント周囲組織の治癒は難しく、症状が進行する例が多い。インプラント周囲炎治療薬の候補として着目したポリリン酸は骨形成を促進させるほか、炎症誘導に深く関わるマクロファージの機能も変化させる可能性がある。グラム陰性菌細胞壁構成成分であるリポポリサッカライド(LPS)の刺激を受けたマクロファージは炎症を引き起こすが、ポリリン酸を作用させると転写因子STAT1のリン酸化抑制、続いて誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)の発現抑制が起こり、炎症メディエーターのひとつである一酸化窒素の産生量が低下することを研究代表者は明らかにしてきた。平成28年度は、LPS刺激マクロファージにポリリン酸を作用させるとその性質がどのように変化するのか、さらに詳しく検討した。LPS刺激により誘導されるインターロイキンIL-1β、IL-6、IL-10、IL-12の放出に対しては、ポリリン酸は影響を与えなかった。また、増殖因子FGF-2の放出は、マクロファージへのLPSやポリリン酸の処置では検出されなかった。一方、ポリリン酸はLPS誘発性のケモカインCXCL10の放出を抑制することが明らかになった。ポリリン酸により産生が抑制されたCXCL10やiNOSは、リン酸化STAT1により発現が促進される。ポリリン酸はLPS刺激後6-24時間においてリン酸化STAT1を大きく減少させるが、この時その上流のリン酸化JAK1とリン酸化TYK2は減少せず、むしろ増加していた。以上のことから、LPS刺激マクロファージにおいてポリリン酸はSTAT1のリン酸化を選択的に抑制し、リン酸化STAT1により促進される遺伝子発現を低下させる可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度はLPS刺激マクロファージにポリリン酸を作用させるとその性質がどのように変化するのか検討し、新たにCXCL10放出量が低下することを見出した。一方、マクロファージの貪食能の評価も平成28年度に開始したが、引き続き平成29年度に実施することになった。JAK1とTYK2に対するポリリン酸の作用については計画以上の進展であった。したがって、現在までの進捗状況はおおむね順調と考える。
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Strategy for Future Research Activity |
ポリリン酸処置によるマクロファージの性質の変化について、貪食能に関する検討をさらに進める。また、LPS刺激マクロファージに対するポリリン酸の作用機構として、これまでにSTAT1リン酸化の抑制が明らかになった。今後、ポリリン酸によるSTAT1リン酸化抑制の機序を、上流のシグナル伝達やSTAT1の脱リン酸化に焦点を当て詳細に解析する。さらに、ポリリン酸を作用させたマクロファージが骨代謝を担う骨芽細胞と破骨細胞にどのような影響を与えるのか検討する予定である。
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Causes of Carryover |
平成28年度の研究計画であったマクロファージの貪食能の評価を、引き続き平成29年度に実施することになったため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度助成金から生じた次年度使用額は、マクロファージの貪食能に及ぼすポリリン酸の影響を明らかにするための実験に使用する。平成29年度助成金は当初から計画していたマクロファージにおけるポリリン酸の作用機構の解析に使用する。
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