2016 Fiscal Year Research-status Report
人為的に誘導した幹細胞を用いての硬組織再建方法の確立
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16K20543
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
松本 光史 昭和大学, 歯学部, 兼任講師 (50736486)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 再生 / 幹細胞 / 骨代謝 / 破骨細胞 / 骨芽細胞 / LPS |
Outline of Annual Research Achievements |
BMP、bone morphogenetic proteinは筋組織に移植すると骨形成を誘導するタンパク質で、歯槽骨再建や硬組織の再生医療への応用が期待されてる。しかし治療に用いるには、多量のBMPが必要でコストが高くなること、また細菌感染が骨形成に及ぼす作用が不明であることが問題点として挙げられる。そこで本研究ではまず、BMPの作用を促進する因子を探索し、さらに細菌成分であるLPSが骨形成に及ぼす影響について解析した。コラーゲンスポンジにBMP-2とTGF-β1の他に、口腔内細菌であるジンジバリスまたはアウレウスを添加したところ、誘導された骨量は有意に減少した。また、菌体成分であるLPSも、埋入量に依存して骨形成を抑制した。このメカニズムを解明するために、広背筋膜下に誘導した異所性骨の組織を解析した。総重量、総骨量、および組織あたりの骨量はLPSの添加により顕著に減少していた。骨芽細胞の割合は増加していたが、解析の結果、石灰化されていない類骨が増加していることが判明した。また、破骨細胞の形成に大きな変化は見られなかった。そこでLPSを用いて骨欠損修復作用の評価を行った。BMP-2を含むコラーゲンスポンジは骨欠損部位を修復するのに十分量の骨を誘導したがLPSを含むコラーゲンスポンジでは修復が不十分であった。これらの結果から、LPSが骨形成を抑制することが明らかになった。次にDNAマイクロアレイで遺伝子の発現変化を網羅的に解析したところ、LPSにより発現レベルが最も著しく上昇したIL-1βに着目した。そこでIL-1αβKOマウスにLPSを含むコラーゲンスポンジを埋入したところ、骨形成は抑制されなかった。また。野生型マウスにIL-1βを含むコラーゲンスポンジを埋入するとLPSのときと同様に骨形成が抑制された。これはLPSがIL-1産生を介して骨形成を阻害していることを示唆する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度の研究計画は、1.IL-1βが骨再生に及ぼす影響について解析する、2.IL-1β抑制物質がLPSの作用に及ぼす影響について解析する、3.組織塊の間葉系幹細胞の性質を解析する、の3つであった。今年度の進捗は1と2を終了し、3を実施中である。3は組織塊から細胞を回収し、培養する方法を開発中であり、現時点で培養条件をほぼ確立できた。すなわち、平成29年度はこの培養条件を用いて予定の実験を実施する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は当初の予定どおり、LPSによる骨再生阻害機構を解明し、その成果を骨再生に応用する予定である。その推進方策として、コラーゲンゲル以外の基材すなわち、人工基底膜マトリックスやリン酸カルシウム化合物などを用いて骨再生を促進する方法を検討する。また、組織塊から分離した幹細胞の遺伝子発現様式に基づいて、細胞増殖や分化の促進条件について検討したい。また、本学の他の研究者の協力を得て本実験を推進していきたい。
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Causes of Carryover |
組織のサンプル解析を外部委託する予定であり、その金額が約80万円である。現在、サンプルを準備・発送する段階であるため、それに相当する金額(811,335円)を次年度に繰り越すことになった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
組織サンプルの準備が出来次第、それを外部の業者に解析委託するのに使用する予定である。
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Research Products
(1 results)