2016 Fiscal Year Research-status Report
多分化能を有する脱分化脂肪細胞(DFAT)を用いた顎骨再建法の確立
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16K20552
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Research Institution | Fukuoka Dental College |
Principal Investigator |
柳 束 福岡歯科大学, 口腔歯学部, 助教 (60758035)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 骨再生 / DFAT / スフェロイド |
Outline of Annual Research Achievements |
脱分化脂肪細胞(DFAT)は間葉系幹細胞と比較し、再生医療に適した細胞である。また、スフェロイド技術を応用する事で更なる再生能の向上が得られるのではないかと考えた。しかし、DFATを用いた骨再生研究はまだ少なく、DFATスフェロイドに関する研究も未だにない。本研究の目的はDFATスフェロイドの骨分化能及び再生能を評価する事である。 【方法】骨分化誘導後アリザリンレッド染色を行う事で骨分化能を評価した。また、骨関連遺伝子及びタンパクの発現を比較した。実際に生体内で骨再生が促進されるかどうかを検討するために、ラット頭蓋骨中央に直径8mmのトレフィンバーを用いて骨欠損を作製し、細胞の移植を行った。移植群はコラーゲンスポンジ単体(CS群)をコントロール群として、CS群+DFAT(DF群)、CS群+DFATスフェロイド(DFS)、CS群+骨分化誘導を行ったDFAT(DF-O群)、CS群+骨分化誘導を行ったDFスフェロイド群(DFS-O群)の計5つの群を用いた。手術3か月後屠殺を行い、µCT解析及びHE染色にて評価した。 【結果】スフェロイド化する事で骨分化能は向上した。また、ALPやRunx2等の骨関連遺伝子の有意に高い発現やALP,Runx2及びOsterix等の骨関連タンパクの高い発現を認めた。µCT解析の結果、DF群と比較してDFS群では有意に高い骨形成率が認められた。HE染色の結果も同様に、CS群では欠損部の多くが結合組織であったのに対し、他群ではより多くの新生骨が認められ、更にDFS-O群において欠損部はほとんど新生骨で満たされていた。 【考察】DFATスフェロイドは平面培養のDFATと比較して高い骨分化能を有しており、この事が生体内での骨再生を促進した事が示唆された。 【結論】DFATスフェロイドは骨再生能も優れており、臨床応用に適した移植法である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在の進捗状況は概ね良好に進行している。DFAT抽出法及びスフェロイド作製法は既に確立しており、骨分化誘導及び脂肪分化誘導時のアリザリンレッド及びオイルレッド-O染色を行い、骨及び脂肪系統への分化を確認している。またリアルタイムPCRやウェスタンブロッティングにより、骨関連遺伝子及び骨関連タンパクの発現及びスフェロイド化する事でそれらが上昇する事も確認済みである。In vitro実験としては、まだ免疫染色及び細胞走化性の評価が終了していない。理由として、免役染色に関しては、ラット由来細胞を用いているため抗体のマッチングが難しく、鮮明な染色像が得られる条件を模索している。細胞走化性の評価に関してはスクラッチ法及びトランズウェル法の両者を検討しているが、スフェロイドと平面培養の比較に用いる手法としてはやや難しい事が判明した。そのため、現在どのように評価をするべきかを再検討中である。動物実験としては次年度に顎骨への移植を検討していたが、リアルタイムPCRやウェスタンブロッティング及び染色の結果が得られた為、本年度に頭蓋骨欠損モデルを用いて実験を行った。評価としてはµCT解析による新生骨形成率の評価及びHE染色による病理組織学的評価を行った。その結果、本研究の有用性を示唆する結果が得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究方針として、現象としての骨再生促進効果及び骨分化能の向上という結果は得られているため、今後はその現象がなぜ起こるのかという所まで研究を進めていきたい。 具体的な方法として、スフェロイド及び平面培養時の遺伝子発現の違いを再検討する事で、どういった経路による刺激を受けて骨分化が促進されるのか明らかにしてゆく。特に、BMPシグナル経路とWnt経路のクロストークは最近のトピックでもあるので、これらに注目する他、インテグリンやカドヘリンといった接着に関する要素及び細胞骨格に関する発現の違いに注目して研究を行う予定である。同時に前年度遂行できなかった免疫染色や細胞走化性の評価も行う。動物実験に関しては、現在顎骨への移植法を確立しつつあるが、既に頭蓋骨への移植実験にて良好な結果が得られているため、必要であれば行う事とする。
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Causes of Carryover |
本年度に行う予定であった研究の一部を次年度に行う予定であるからである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度完遂出来なかった免疫染色及び細胞走化性の評価を行うとともに、細かな遺伝子発現を比較していく。
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Research Products
(4 results)