2017 Fiscal Year Research-status Report
Collagen type-XIIによる歯槽骨再生に適した軟組織制御法の確立
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16K20553
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Research Institution | Fukuoka Dental College |
Principal Investigator |
堤 貴司 福岡歯科大学, 口腔歯学部, 助教 (70736652)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 歯学 |
Outline of Annual Research Achievements |
歯科補綴治療において、患者の歯槽骨の吸収の程度およびその骨質の状態は、治療計画の立案において深く考慮すべき因子であり、治療結果にも大きく影響してくる。骨吸収が著しい場合は、安定する義歯の作製は困難になり、インプラント治療を行う際には骨再生療法が必要になる場合がある。よって、歯槽骨の状態を良好に維持することは歯科治療の予後を左右するものといえる。しかし、抜歯後の歯槽骨の吸収のメカニズムは十分に解明されてはいない。また、歯槽骨に再生療法を施した場合の新生骨がどのようなメカニズムで生体本来の骨吸収・骨形成の骨リモデリングのサイクルに取り込まれ代謝を受けるのかについても、未だに不明な点が多く残されている。 我々は、既に歯根膜を対象とした咬合性外傷に関する研究でメカニカルストレス(MS)によって線維結合型コラーゲンであるcollagen type-XII の発現が上昇し、損傷を受けた歯根膜の組織安定性に関与していることを発見している。そこで、本研究では抜歯後の損傷から回復した歯槽骨周囲歯肉におけるcollagen type-XII が骨代謝に与える影響を解析することにより、抜歯後の歯槽骨吸収のメカニズムを解明するとともに、再生療法による新生骨に対する軟組織の動態を明らかにすることを目的とする。 H28年度ではIn vivo マウス抜歯モデル実験系を確立し、病理組織学的解析および軟組織のポリメラーゼ連鎖反応(PCR) による遺伝子解析によりMS 依存的に発現が上昇する因子(collagentype-XII,TRPA1,CCL2 等)の変化を評価した。さらに、H29年度ではマウス組織より単離した初代培養細胞に伸展刺激を加えるin vitro 実験系を確立することを目標とした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H29年度ではin vitro マウス抜歯モデルの確立を目指す予定であったが、適切な条件の選定は十分には遂行できていない。しかし、その代替案として抜歯後の義歯による補綴処置を想定した実験モデルを立案し、ディッシュ底面に設置できる形態に作製した義歯床用レジン上に歯根膜細胞および口腔粘膜細胞を培養することに成功した。顕微鏡による観察や分子生物学的解析も可能となり、今後の実験計画に有益な実験系の確立となったと考える。一方で、in vivoの解析に関しては、歯槽骨再生への増悪因子を付与した環境下での実験を検討したが、12月齢の中老年マウスを用いた歯周炎罹患アルツハイマー様病態モデルマウスの導入を検討している。
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Strategy for Future Research Activity |
現在の進行状況では、in vivoの実験系とin vitroの実験系がシミュレーションする対象および環境にミスマッチが生まれつつあるため、まずは実験モデルがin vivo とin vitroで相乗効果を生み出しうる様に計画の修正を必要に応じて行っていく。さらに、歯槽骨再生の増悪因子を付与した病態モデルに関しては、今後は脳科学的解析も含めた行動科学の分野に波及した研究を行えるように十分なデータの蓄積に努めたい。
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Causes of Carryover |
H29年度は,新規実験系の確立および標的因子の探索を主に行ったため,消耗品や抗体等のコストの高い試薬の購入を積極的に行わなかったために次年度への繰り越しが生じた。また、予算配分に余裕が見込めれば購入を検討している物品もあったため、次年度では積極的に解析をすすめ必要な消耗品・物品の購入に充てたいと考える。
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