2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K20561
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
長岡 亮介 東京医科歯科大学, 歯学部附属病院, 医員 (30760805)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 低酸素環境 / 顔面形成 / 唇裂 / 外表奇形 |
Outline of Annual Research Achievements |
唇顎口蓋裂はヒトにおいて最も高頻度で見られる先天異常で、唇裂はその類型の一つである。本来癒合すべき複数の顔面突起が癒合不全を生じることで唇裂は生じる。癒合不全の原因は遺伝子的要因、環境的要因ともに多数挙げられているが未だ全容は不明である。本研究では分子生物学的手法を用いて環境的要因からの唇裂の原因探索を目的とする。 具体的には研究実績のある低酸素環境下マウス飼育による唇裂の発生を分析し、原因となるタンパクおよび遺伝子の発現を調査する。唇裂等の顔面奇形は罹患者および家族の精神的負担は計り知れず、原因の探索や予防法を見出すことは学術的のみならず社会的貢献の側面で非常に有意義である。 実績のあるin vitroでのマウス胎仔全胚培養法の結果を基に、本年度は妊娠マウス母獣の低酸素環境下飼育を行った。予備実験の段階ではあるが、口唇形成時期に低酸素環境に曝露されたマウス胎仔のサンプリングを完了している。回収したサンプルを元にタンパク質や遺伝子発現についてマイクロアレイなどの網羅的な解析を行なうとともに、これまでの結果を参考とした免疫組織化学染色法、in situ hybridization法、RT-PCR法を用いた肉眼的および定量的評価を予定している。これらの結果と既知の遺伝子シグナルのpathwayを比較検討することで、環境要因(低酸素状態)による唇裂発症機序を明らかとし、ヒトにおける唇裂発症機序を解明する基盤を構築する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「研究実績の概要」にて記した「妊娠マウス母獣の低酸素環境下飼育」であるが、当初は学内共用設備で実験が可能な見通しだったため、予算の適正な執行の観点から実験設備の新規購入は行わず、共用設備が使用可能となる時期より実験を行う予定としていた。しかしながら、共用設備が管理者側で試験運用をされていなかったため、管理者による試験運用に時間を要し、かつ、複数講座で共用する場合の条件が確定しなかったため、年度内は共用設備での実験の目途が立たなかった。止むを得ず器材を業者より借用し、予備実験を施行した。共用設備の使用開始を待っていた都合上、実験計画は当初予定よりやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
実験器材の借用により、当初予定した実験計画および低酸素環境下での予備実験を施行した。今後は予備実験で得られたサンプルを用いて免疫組織化学染色法、in situ hybridization法での分析を行う。その分析結果を考慮し、RT-PCRを用いた定量的な評価も行う。また、酸素濃度が適切な条件であったかについても検討し、追加実験を行う。追加実験を行う場合は共用設備の利用を予定するが、前述の進捗状況のごとく共用設備の利用が困難な場合は実験設備を新規構築する。
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Causes of Carryover |
当初、実験器材(低酸素環境下での妊娠マウス飼育)は予算の大部分を執行し購入する予定であった。しかしながら、学内共用設備で同等の条件下での実験が行える見通しがあったため、実験設備の構築を見合わせ、共用設備の使用可能時期を待つこととした。「進捗状況」にて記した通り、年度末に近づいても共用設備の利用開始の目途が立たなかったため、実験器材購入予定分の予算が次年度使用額として発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
借用器材により予備実験を施行できたため、予備実験で得られたサンプルの分析を行う。分析の結果から追加実験の条件を決定する。その際には初年度購入予定であった実験器材の購入を行い、追加実験を開始する。
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