2016 Fiscal Year Research-status Report
口腔癌担癌宿主における化学療法を用いた免疫抑制細胞集団の治療標的化
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16K20563
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
今上 修一 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 助教 (80456392)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 口腔癌 / 化学療法 / 免疫療法 / 免疫抑制 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、癌化学療法がもたらす担癌宿主における免疫学的な変化に着目し、口腔癌マウスモデルを用いて、化学療法剤の投与による直接的な抗腫瘍効果とともに、担癌宿主の様々な臓器における各種免疫細胞が質的および量的にどのように変するかについて解析を進めてきた。本研究では、ある種の化学療法剤が使用時期や投与量によって、担癌宿主における抗腫瘍免疫反応を増強する効果を発揮するかどうかを検討するため、口腔癌マウスモデルを用いて、各種化学療法剤の投与時期および投与量を各種設定して、T細胞免疫応答に与える影響ならびに各種免疫細胞の変化について、解析を行うことを目的とした。具体的には、C3Hマウスと同マウス由来の扁平上皮癌細胞NR-S1K細胞を用いたマウス口腔癌モデルを作製し、各種の化学療法剤を低用量で複数の投与量を設定し、単独または免疫補助因子との併用投与を行い、腫瘍、腫瘍所属リンパ節など各臓器における免疫細胞の出現頻度や形質変化、機能変化に焦点を当てた免疫学的解析した。現在の実績としては、腫瘍移植後3週目の口腔癌モデルマウスに各種化学療法剤のゲムシタビンを腹腔内に投与し、マウスから腫瘍組織、頚部リンパ節、末梢リンパ節(鼡径、腋窩)、脾臓、末梢血をそれぞれ採取し、免疫系細胞としてCD4陽性T細胞、CD8陽性T細胞、CD19、B220陽性B細部、F4/80陽性マクロファージ、CD11c陽性樹状細胞、NK1.1陽性NK細胞、CD4、CD25、Foxp3陽性Treg、CD11b、Gr-1陽性MDSCの発現頻度を確認した。その結果、担癌マウスにおいてゲムシタビン投与がMDSCの割合を有意に低下されることが確認された。さらに移植した腫瘍細胞の細胞表面抗原であるCD80、CD86、MHC分子群、D40などのT細胞共刺激分子の発現増強が確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、化学療法剤による抗腫瘍免疫反応の誘導とその機序の解明を目的としている。口腔癌においては、シスプラチン、5FU、ドセタキセルが臨床でもちいられている。5FUおよびドセタキセルは、すでに担癌宿主内において、免疫抑制性細胞であるMDSCを選択的に除去する効果が示されている。また、現段階で、口腔癌担癌マウスを用いた解析により、ゲムシタビンがMDSCを選択的に除去する可能性を示されている。さらに、ゲムシタビンを投与した担癌マウスにおけるT細胞免疫応答の増強が示され、その機序として腫瘍細胞の形質変化が示唆された。すなわち、化学療法剤の抗腫瘍効果として、癌細胞に対する細胞生物学的な修飾効果のみならず、免疫学的な修飾効果も期待することができることを本研究ではすでに確認されている。これまで、いずれの化学療法剤も、口腔癌を含めたその他多くの癌腫において、免疫学的な効果については、いまだに不明であったが、本研究の成果は、今後の研究の足掛かりに十分な情報を得ていると考えられる。 そこで本研究では、さらにシンジェニックのマウス口腔癌モデルを用いて、化学療法剤による直接的な抗腫瘍効果の評価のみならず、抗腫瘍免疫反応の増強する治療法を検討していくこととする。
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Strategy for Future Research Activity |
ゲムシタビンを投与した担癌マウスの癌細胞では、コントロールの担癌マウスの癌細胞に比べて、T細胞共刺激分子であるCD40、CD80、CD86、ICAM-1の発現が、著しく増強していることが確認されたことから、今後の解析として、化学療法剤がもっともT細胞の増殖を促すことができる濃度について検討するため、腫瘍移植後3週目の担癌マウスに対して各種化学療法剤(シスプラチン、5FU、ドセタキセル、ゲムシタビン)を複数の投与量を設定してマウスの腹腔内に投与し、マウスから腫瘍組織、リンパ節、脾臓、末梢血よりT細胞を分離し、CFSE色素で細胞染色を行い、細胞増殖試験を行う。抗CD3抗体および抗CD28抗体刺激下による増殖の様子をフローサイトメトリーを用いて観察する。また、IFN-γの細胞内染色も同時に行う。また各インターフェロン、ATRA、BPとの併用による効果についても同様の検討を行う。具体的にはNR-S1K口腔癌担癌マウスに対して、①シスプラチン、5FU、ドセタキセルそれぞれを単独、②各抗癌剤と各種IFN、ATRA、BPのそれぞれの併用により治療実験を行い、その評価する項目として、a)担癌マウスの腫瘍増殖、生存期間を確認することにより、各治療グループ間での治療効果を評価する。b)担癌マウスの腫瘍組織および顎下リンパ節から分離したTリンパ球をX線照射により不活化したNR-S1K細胞と抗CD3/CD28抗体存在下で共培養後、PMA/Ionomycinで再刺激をし、CD8陽性T細胞およびCD4陽性T細胞におけるIFNγの産生を細胞内染色で確認し、各治療グループにおけるTc1反応およびTh1反応の有無の評価を行う。
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