2016 Fiscal Year Research-status Report
幹細胞由来培養上清を用いた大規模骨欠損における新規治療法の開発
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16K20568
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
原 憲史 名古屋大学, 医学部附属病院, 助教 (20635560)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 骨再生 / 大規模骨欠損 |
Outline of Annual Research Achievements |
ラット大腿骨欠損モデルの骨欠損部に応用する材料の検討をした.骨再生を期待する場所の足場の提供を目的に,凍結乾燥した多孔性のアルギン酸Naを製作した.アルギン酸粉末を滅菌水に溶かし,粉液比の条件検討をした.作製したアルギン酸NaはSEMで構造を観察した.また間葉系細胞をアルギン酸Naでコーティングしたディッシュ上で培養し骨形成関連マーカーの発現の変化を調べるために,in vitro実験の計画を立て試みたものの,細胞の回収率に問題があり,改善が必要な段階である. また動物実験の予備実験として,大腿骨の中央部に5ミリ大のcritical sizeの欠損をつくり,創内固定を設置して閉創するモデル製作を行い,モデルに問題点がないか確認した.術後に8週間生存することを確認し,モデル製作に問題はないことを確認した.また予備実験で製作された動物モデルは屠殺し,摘出した大腿骨を脱灰したのち,パラフィン包埋および薄切をし,組織切片を作製した,脱灰に用いる薬液や時間,脱水,透徹の手順の最適化を図った.動物実験モデルにおいて,欠損部にチタンメッシュあるいはチタン箔を遮蔽膜として使用し,周囲軟組織の侵入を防止した.骨欠損部をチタン遮蔽膜で被覆し,アルギン酸Naの細胞保持作用により内在性の間葉系幹細胞による骨再生が得られるか検討を重ねているところである.なおアルギン酸Naは創内でカルシウムと反応し,ゲル化するため,細胞の3次元培養が可能とされる.動物予備実験の組織像では,骨欠損部に近心側からの新規の骨再生を確認した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ラット骨髄からの間葉系細胞の初代培養から継代の過程で,細胞の増殖が緩やかで,in vitro実験で必要とする量に十分ではない.またin vitro実験において,アルギン酸Naを塩化カルシウムと反応させて作製した,ゲル状のアルギン酸Caを細胞培養ディッシュに敷き,その表面でラット骨髄由来の間葉系細胞の培養を試みている.しかしながら,アルギン酸Caが平坦ではなく,凹凸があり,細胞培養中に実際に細胞が増殖しているか確認に苦慮している.SEMで細胞の局在は確認したものの,分子細胞学的な実験をするのに必要な細胞数を回収する方法に改善の余地を残している. 動物実験の手技は確立されているものと考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
ラットはLewis系を用いている.理由としては,骨欠損作製後のプレートの創内固定が大腿骨の成長により影響を受けるので,体が比較的小さく,成長曲線が緩やかな系統であることが挙げられる.しかしながら,同系ラットの大腿骨から採取した骨髄由来間葉系細胞の培養に時間を有し,さらには継代を重ねると細胞増殖が起こらなく事象が起こっている.手技的な問題があるとは考えられるが,汎用されるSD系,Wister系ラットを使用し,間葉系細胞が入手できる利点を生かして実験系を進めていくという方策を考えている. 細胞培養を問題なくできれば,in vitro実験での結果も順次得られているものと考えている.
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Causes of Carryover |
臨床に費やす時間が多く,実験や研究へのウェイトが予定よりも小さくなったこと. また受け持ちの大学院生の育成のために,座学と基礎的な実験から始めていることもあり,実験にかかる費用が予定よりも少なくなった.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
実験,研究に向けた時間配分を多くとるように改善する. とくに細胞培養や動物実験が進んでいくと,培地や実験器具,消耗品の支出が増すと考えられる.また得られた実験結果を報告する場として学会活動や論文作成にも積極的に取り組み,研究費を有意義に使用させていただきたい. 大学院生には一研究者になる端緒となるようきちんと教育し,研究活動とその結果が国民の健康への寄与となるよう取り組みたい.
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Research Products
(5 results)