2017 Fiscal Year Research-status Report
粘膜類天疱瘡の唾液を用いた新規診断法の開発と抗原特異的発症メカニズムの解明
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16K20585
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
安河内 篤 九州大学, 歯学研究院, 共同研究員 (30724968)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 粘膜類天疱瘡 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、前年度に発展があった口腔扁平上皮癌の浸潤・転移過程における細胞-基質間接着の動態に着目した研究を行った。特に、ヘミデスモソームの構成成分の中でも、現在までに、大腸癌、肺癌等の複数の癌種においてその発現の亢進が浸潤・転移能と深く関わっていることが示唆されているタンパク質であるBP180(180 kDa bullous pemphigoid antigen)に着目した。解析の結果、口腔扁平上皮癌組織におけるBP180は、原発巣および所属リンパ節転移巣において、癌組織辺縁に一致した発現の亢進が認められ、他の癌種では報告されていない特徴的な局在パターンを示した。また、ヒト口腔扁平上皮癌細胞株(NA、SAS)を用いた三次元培養実験においても、BP180は、スフェロイド外部の基底膜成分の有無に関わらず、時間経過とともに辺縁に局在していくことが明らかとなった。 以上の結果から、BP180は口腔扁平上皮癌において、癌組織内部では発現が消失し、さらに(基底膜の有無に関わらず)辺縁部では発現が亢進するという、特徴的な発現パターンを示すことが明らかとなった。すなわち、本タンパク質は単なる細胞-基質間接着因子としてのみならず、その異常発現が癌の浸潤・転移過程に何らかの役割をもつ可能性が示唆された(安河内篤、森岡政彦、川久保-安河内友世、中島 学、中村 誠司、口腔扁平上皮癌における BP180 の局在、第59 回歯科基礎医学会学術大会、2017年9月16日-2017年9月18日、松本)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定に加え、新たな知見(口腔癌におけるBP180の役割についての研究結果)が見出され、順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
BP180が癌の浸潤・転移にいかなるメカニズムで関わっているかin vitroの系で検討する。 具体的には、まずBP180の発現制御についての解析を中心に解析を進める。現在までに、BP180の発現制御は、癌抑制遺伝子であるp53に依存するとの報告が多数あるが、解析中の口腔扁平上皮癌細胞株4種は全て野生型p53をもたないことがシーケンス解析の結果明らかとなっている。 そのため、口腔扁平上皮癌におけるBP180の発現制御はp53に依存しない可能性が示唆され、次年度以降、他の転写因子あるいは非コードRNAに着目した解析を行うことで、浸潤・転移を制御している当該蛋白質の上流にある制御機構を明らかにする。
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Research Products
(3 results)