2016 Fiscal Year Research-status Report
骨髄播種癌細胞の休眠状態に基づく口腔癌の転移再発メカニズム解明と新規治療法の創出
Project/Area Number |
16K20594
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
中村 拓哉 熊本大学, 医学部附属病院, 非常勤診療医師 (80761212)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 骨髄 / 播種癌細胞 / 乳がん / エストロゲン陽性タイプ / 癌幹細胞 / 抗癌剤耐性 / 増殖抑制状態 / マイクロアレイ解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
骨髄環境が癌の再発転移に大きく関連する癌の休眠状態や抗がん剤耐性に深く関わっていることを解明するために、骨髄嗜好株であるBM-DTC株(BM-HEp3)及び肺嗜好株であるLu-DTC株(Lu-HEp3)を用いて解析を行った。BM-DTC株は、増殖抑制状態であり抗癌剤耐性を有していることが判明しており、そのような悪性形質が癌幹細胞に近い性質ではないかと考え、癌幹細胞系マーカーやその他マーカーをリアルタイムPCRにて検討し、Sphere assay法, ALDH活性酵素測定によって、BM-DTC株が癌幹細胞形質を有した細胞であるのかを検討したが、明らかな幹細胞の特性は認めなかった。このことから骨髄播種癌細胞は今まで報告されている癌幹細胞とそのメカニズムとは違った性質を持っている細胞集団で細胞周期静止状態維持や抗がん剤耐性に関与していると思われる。 続いて、各嗜好株と原発巣から採取したP-HEp3を用いて行ったマイクロアレイ解析の結果をもとに、BM-DTCsの発現プロファイルが、乳がんのエストロゲン陽性タイプの乳がんや乳がんの骨再発巣と非常に似た発現プロファイルを示したことから、エストロゲンレセプター阻害剤を用いることによってBM-DTCsにおける静止期維持や抗癌剤耐性といった性質がどのように変動するか検討をおこなったが、大きな変動は認めなかったことから、少なくとも単独では関与していないことが判明した。現在他の因子も含めて検討中である。 原発巣の中に含まれる細胞集団の中で、CXCR4及びTGF-β2の発現が高い細胞群が骨髄に播種されやすいか検討するためにP-HEp3にCXCR4やTGF-β2を添加したところ、CXCR4では変化なかったが、TGF-β2にて増殖抑制状態を示し、BM-HEp3と同じような性質を示した。抗癌剤耐性は現在検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
マイクロアレイ解析にてBM-DTCsの発現プロファイルは、乳がんのエストロゲン陽性タイプの乳がんや乳がんの骨再発巣と非常に似た発現プロファイルを示したことからエストロゲンレセプター阻害剤を用いてBM-DTCの特性が見られることを予想したが、その結果が得られなかったため、追加の因子の検討も含めてマイクロアレイ結果を再検討をしているため遅れている。In vivo実験に関しては現在予備実験的にマウス大腿骨内への直接HEp3細胞の移植を行い、骨髄への生着や肺への転移を確認している。現在数匹のマウスを用いて安定した結果が鰓得ていないため手技を検討中である。癌患者血液サンプルからの循環癌細胞(CTC)の抽出は現在安定した手技を検討中のため、それに伴う検討が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
マイクロアレイ解析にて増殖抑制状態維持や抗がん剤耐性といったBM-DTCsの特性に関連する可能性が高そうなものを検討したが、有意な結果が得られなかったため、その他の因子も含めてマイクロアレイ解析結果の再検討を進めていく。 In vivo実験では、マウス骨内への移植が結果が安定しないため、手技の安定を図るとともに、過去の論文から生着しない原因を検討する。改善を認めない場合は心臓への移植手技に切り替える。またそれと並行してIn vitro で得られている、CXCR4-SDF-1-TGF-β2シグナルが、BM-DTCにおける抗癌剤耐性の獲得に関与していることを In vivo において再構築を行う。CXCR4阻害剤やTGFβ2アンチセンスを用いてIn vivoにおける抗癌剤の治療実験を進めていく。 熊本大学歯科口腔外科学分野で治療を行ったOSCC患者の血液サンプルを用いて、血中を循環しているCTCの分離を行う。そのCTCを培養しその性質を検討する。患者サンプルから分離したCTCも増殖抑制状態、抗癌剤耐性を示すかどうか検討を行う。また、PCR法、ウエスタンブロティング法を用いて、各種増殖マーカー、転移マーカー、間葉系マーカー、上皮系マーカーを測定する。その中で、BM-DTCと共通の性質を呈する細胞の有無を検討する。
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