2016 Fiscal Year Research-status Report
口腔癌転移巣の微小環境を規定する新規マーカーの探索
Project/Area Number |
16K20602
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
栗原 都 奈良県立医科大学, 医学部附属病院, 研究員 (40453170)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 口腔癌 / 転移 / 微小環境 |
Outline of Annual Research Achievements |
がんの浸潤・転移には数多くのステップが必要であるが、転移先の臓器にあらかじめがんにとって好ましい微小環境が形成されている方が転移しやすいことは想像に難くない。申請者らはマイクロアレイによる網羅的遺伝子発現解析により、口腔癌のリンパ節転移を制御する既知・新規の候補遺伝子を多数抽出している。それらのうち詳細な機能が未知の遺伝子について、細胞株ならびに臨床検体を用いた検討をおこなったところ、リンパ節転移巣の微小環境をコントロールする可能性のある候補をいくつか見いだした。口腔癌細胞株を用いた検討において、それらの多くは増殖・浸潤能の促進ならびにアポトーシスの抑制といった腫瘍促進作用を有していた。また局所におけるリンパ球・線維芽細胞・マクロファージといった炎症細胞やリンパ管・血管内皮細胞の活性化を制御し、リンパ節転移巣におけるニッチの形成に関与している可能性が期待された。 またパラフィン切片を用いた免疫組織化学やWestern blottingによるタンパク発現解析、およびリアルタイムRT-PCRを用いた遺伝子発現解析により、それらの候補はいずれも口腔癌の進展症例・リンパ節転移症例ほど高発現を示していた。それらのうち遺伝子AやBを発現した症例はそうでないものと比較して有意に予後不良であり、多変量解析では独立した予後不良因子となった。なお一部はマイクロRNAやプロモーター領域によるメチル化による発現調節されることも明らかにしている。 なお申請者らが見いだしたこれらの新規遺伝子は正常口腔粘膜では検出されず、脳・心臓・肺・肝臓・腎臓といった主要臓器でもほとんど発現していないことより、診断マーカーのみならず治療標的としても有用である可能性が示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
血清・唾液からのタンパク・遺伝子発現解析が思うように進まなかった。しかしながらあらたに構築したELISAの系を用いて解析を進める予定である。また変異解析も全例に実施出来なかったが、今後も引き続いて解析を実施する。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は治療標的としての可能性や生体内での機能を探るためにヌードマウスを用いた動物実験を行う。具体的には口腔癌細胞株を皮下移植し、候補遺伝子のin vivo siRNA投与による影響を確認する。また発現調節マイクロRNAのさらなる絞り込みを行うと同時に、臨床検体を用いた発現解析を施行する。 なお既に記載したように、ELISA系による血清・唾液への分泌レベルの測定や次世代sequencerによる変異解析を重点的に行うと同時に、昨年度までの解析も症例数とターゲットを増やして引き続き行う予定である。
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Causes of Carryover |
血清・唾液を用いた発現解析が思うように進めなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
あらたに構築したELISAの系により随時解析を行う予定である。
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Research Products
(5 results)