2016 Fiscal Year Research-status Report
痛覚特異的三叉神経節ニューロン群におけるATPを介した細胞間相互作用の解明
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16K20616
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Research Institution | Tokyo Dental College |
Principal Investigator |
黒田 英孝 東京歯科大学, 歯学部, 助教 (90755018)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 三叉神経 / 1次ニューロン / ATP受容体 / P2X7受容体 / ラット |
Outline of Annual Research Achievements |
難治性の痛みを伴う病態の一つに神経障害性疼痛がある。その発生や調節機構にATPを介した細胞間コミュニケーションの関連が示唆されている。細胞外ATPは開口分泌、細胞膜チャネル、細胞死などによって放出され、細胞膜上のATP受容体を活性化する。ATPを含めたヌクレオチド受容体にはイオンチャネル型ATP(P2X)受容体とGタンパク共役型ヌクレオチド(P2Y)受容体があり、侵害性疼痛や神経障害性疼痛発生のメカニズムの一端を担っている。P2X受容体はP2X1-7のサブタイプが存在し、なかでもP2X7受容体はグルタミン酸を開口分泌すると報告されている。本研究では三叉神経に発現するP2X7受容体の機能的検索を行った。 三叉神経節の神経細胞とグリア細胞は、P2X7受容体のアゴニストであるBz-ATPにより内向き電流を示した。その電流密度は神経細胞と比較しグリア細胞の方が有意に大きい値を示した。神経細胞、グリア細胞ともに、Bz-ATPの連続投与で、その誘発電流密度は減少し、脱感作現象を示した。神経細胞におけるBz-ATPによる内向き電流は、P2X7受容体の選択的アンタゴニストであるA-740003により有意に抑制されたが、グリア細胞では抑制されなかった。Bz-ATPによる内向き電流の減衰時定数は、神経細胞と比較しグリア細胞の方が有意に大きい値を示した。神経細胞と比較し、グリア細胞でBz-ATP誘発性電流密度は大きかった。 アンタゴニスト感受性、減衰時定数の違いから、両者に発現するBz-ATP感受性P2X受容体に機能的差異があると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は三叉神経のATP 受容体を介したニューロン-ニューロン相互作用、ニューロン-グリア相互作用について、各神経線維(特にAδ ニューロン・C ニューロン(痛覚特異ニューロン))ごとに検討することで、ATP を介した疼痛メカニズムを解明する。7つのサブタイプに分けられるイオンチャネル型ATP(P2X)受容体の中でも、P2X7受容体はグルタミン酸放出することで神経障害性疼痛の一部を担うと報告されている。そこで、三叉神経節のP2X7受容体に着目し、疼痛メカニズムへの関与を検討した。 三叉神経節の神経細胞とグリア細胞は、P2X7受容体のアゴニストであるBz-ATPにより内向き電流を示した。その電流密度は神経細胞と比較しグリア細胞の方が有意に大きい値を示した。神経細胞、グリア細胞ともに、Bz-ATPの連続投与で、その誘発電流密度は減少し、脱感作現象を示した。神経細胞におけるBz-ATPによる内向き電流は、P2X7受容体の選択的アンタゴニストであるA-740003により有意に抑制されたが、グリア細胞では抑制されなかった。Bz-ATPによる内向き電流の減衰時定数は、神経細胞と比較しグリア細胞の方が有意に大きい値を示した。神経細胞と比較し、グリア細胞でBz-ATP誘発性電流密度は大きかった。 アンタゴニスト感受性、減衰時定数の違いから、両者に発現するBz-ATP感受性P2X受容体に機能的差異があると考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
グリア細胞は神経系の動的免疫細胞として働き、細胞外ヌクレオチドに対する感受性が高いとされている。グリア細胞はニューロンに構造的かつ機能的なサポートを与えると共に、他のグリア細胞やニューロンとの間に精巧なネットワークを構築して、双方向的に情報伝達を行っている。このニューロン-グリア間情報伝達には、両細胞から放出されるATP やグルタミン酸などが重要な役割を担うことが知られている。一方で、イオンチャネル型ATP(P2X)受容体の一つであるP2X7受容体は、グルタミン酸放出することで神経障害性疼痛の一部を担うと報告されている。 これまでに本研究は、三叉神経節の神経細胞とグリア細胞にそれぞれP2X7受容体が存在することを明らかにし、さらに両者に発現するP2X7受容体に機能的差異があることを示唆した。しかし、ATP やグルタミン酸がどのような細胞内(間)シグナル、また膜輸送機構を経て細胞外に放出されるかについては結論付けられておらず、これらの放出路やその分子実体についての詳細は未だ不明である。 本研究はこれまでの結果をもとに、各神経線維(特にAδ ニューロン・C ニューロン(痛覚特異ニューロン))ごとにこれらの機能的差異について言及するとともに、神経細胞-グリア細胞間における細胞内(間)シグナルや、膜輸送機構について検討を進めていく。
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Causes of Carryover |
年度末(2017年3月)の学会発表に関する参加費や旅費に充当するため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
第94回日本生理学会大会(2017/3/27~30)に参加し、演題発表を行う。
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[Presentation] Alkali- and ADP-sensitive store-operated Ca2+ entry (SOCE) mediated by Ca2+ release -activated Ca2+ (CRAC) channels in rat odontoblasts.2017
Author(s)
Maki Kimura, Masaki Sato, Yuki Kojima, Asuka Higashikawa, Yuuta Shiozaki, Ryoichi Satou, Reiko Shigefuji, Miyuki Shimada, Hidetaka Kuroda, Kazuhiro Ogura, Hiroyuki Mochizuki, Kyosuke Kouno, Yoshiyuki Shibukawa, Masakazu Tazaki.
Organizer
第94回日本生理学会
Place of Presentation
浜松市
Year and Date
2017-03-28 – 2017-03-30
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