2016 Fiscal Year Research-status Report
FRETイメージングで見る炎症の時刻依存性とその制御
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16K20627
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
西出 真也 北海道大学, 医学研究科, 助教 (40451398)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 概日リズム / 蛍光イメージング / 炎症 / FRET / MAPK |
Outline of Annual Research Achievements |
唾液分泌や睡眠覚醒など多くの生理機能は約24時間周期の概日リズムを示す。近年、概日リズムの概念を取り入れた投薬時刻決定など時間医学の考え方が広まってきている。不規則な生活習慣は睡眠障害のみならず肥満や口腔疾患の原因にもなることが知られており、その影響は小児期において特に大きい。生体の概日リズムは、細胞内で自律的に振動する時計遺伝子やタンパク質のリズムが器官、個体として統合されることにより形成される。研究代表者はこれまで様々な蛍光タンパク質を利用したバイオセンサーを作製、細胞内で発現させ、その局在等の発現パターンを解析することにより概日リズムと疾患発症の関連を研究してきた。概日リズムが炎症に及ぼす影響を調べるため、MAPK(Mitogen-activated Protein Kinase)活性のFRET(Förster resonance energy transfer)現象を利用した測定系を構築した。FRETとは異なる蛍光タンパク質同士が近接した際に起こるエネルギー移動である。MAPKファミリーであるJNK(c-jun N-terminal kinase)の活性上昇によりFRETが起こるように設計されたバイオセンサーを培養細胞に発現させ、炎症性刺激を与えFRETを解析した。アニソマイシンおよびLPS刺激に対するJNKの反応は時刻依存性を示し、細胞のリズムに応じて炎症反応が変化すること示唆された。また、時計タンパク質バイオセンサーを用いたリズム測定を行い、MAPKとの関連を解析した。夜型の生活習慣など生活リズムの乱れは口腔内の炎症にも影響を及ぼすことが考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
MAPKファミリー分子であるERK1, JNK1の活性化ドメイン配列を改良型FRETシステム(京都大学・松田道行先生より供与)に組替えたバイオセンサーを作製した。このセンサーによりMAPK活性を高感度で検出できることを確認した。NIH-3T3細胞をグルココルチコイド刺激によりリズム同調させ、上記蛍光バイオセンサーを用いて細胞質内MAPK活性を4時間おきに24時間測定したところ両者とも明瞭な変動を示し、概日リズムにより活性が制御されていることを証明した。JNK活性はそのアゴニストのアニソマイシンのみならず、細菌由来内毒素であるLPSに対しても時刻依存的な反応を示し、炎症反応が概日リズムに依存することが示唆された。以上の結果は第58回歯科基礎医学会学術大会および同大会サテライトシンポジウム(招待講演)において発表した。また、時計タンパク質BMAL1、CLOCKの蛍光バイオセンサーVenus-BMAL1、SECFP-CLOCKを細胞に導入し、FRETを用いて両者の二量体形成を計測した。様々な時刻において測定を行った結果、BMAL1-CLOCK二量体形成は明瞭な概日リズムを示した。BMAL1はCLOCKと二量体を形成し、様々な遺伝子を24時間周期で転写促進することにより細胞のリズム発振に中心的な役割をもつとともに、MAPKによる時刻依存的なリン酸化により機能調節されることが知られている。リズム解析の結果、JNKのLPSへの反応が大きい時間帯はBMAL1-CLOCK二量体形成が促進される時間帯と一致し、両者の密接な関連が示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
マウス切歯より歯髄組織を採取し、組織培養を行う。歯髄組織を数日培養した後、レンチウィルスまたはアデノウィルスを用いてMAPKのFRETバイオセンサーを導入し計測する。マウス末梢組織リズムは培養操作により変化しないと考えられるが、影響を最小限に留めるため実験を行う時間帯を一定にする。本研究ではできるだけ生体内に近い状態で測定するため歯髄の組織培養を行うが、バイオセンサー導入や培養がうまくいかない場合には、歯髄細胞を初代分散培養し、エレクトロポレーションする等、他の方法も検討する。歯髄組織培養に先立ち、より組織採取・培養が容易なマウス肝臓組織を用いて同様の実験を行う。既にマウス肝臓由来細胞株HepG2細胞を用いた実験により作成したMAPKのFRETバイオセンサーが機能することを確認している。次に明期12時間、暗期12時間の条件下で飼育されたマウスの照明を8時間前にずらし、人工的な時差ぼけ状態を作り生体リズムを攪乱した後、歯髄組織および肝臓を採取する。採取した組織のリズムを測定するとともに、炎症刺激への反応の変化を解析する。小児歯科外来において歯列不正予防のため抜去された交換期乳歯等より歯髄組織を採取し培養、MAPKバイオセンサーを導入しリズム計測する。そのために北海道大学病院・自主臨床研究審査委員会への承認申請を平成29年度の早い段階から開始する。抜去歯は申請者が担当している患者に提供を依頼するとともに、八若保孝教授を始め、他の小児歯科スタッフに協力を求める。所属研究室において患者由来の骨髄および末梢血単核球に対するFRETバイオセンサー導入を日常的に行っており、臨床検体測定のノウハウが蓄積されている。また国内外の学会において成果発表を行うとともに論文を執筆し平成29年度内の投稿を目指す。
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Causes of Carryover |
当初の予定より実験が順調に進展したため、平成に28年度に平成29年度分を前倒し支払請求を行った。しかしマウス歯髄組織培養の条件検討が難航したため、肝臓組織を用いた測定を先に行うことにした。肝臓、歯髄組織培養およびFRETバイオセンサー導入の予備実験終了後にマウス飼育室・動物実験室のセットアップを行う。概日リズム研究を行うためには照明の厳密なコントロールが必須である。前倒し請求した動物室セットアップ費用を次年度に繰り越した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
動物実験施設に実験スペースを確保し、ラミナの遮光を行い、タイマー付照明装置を設置する。動物実験施設使用料および上記セットアップに必要な費用を計上した。また、組織採取後、研究室において培養、遺伝子導入、蛍光顕微鏡による測定を行うため、それらの費用を計上した。
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[Journal Article] Improved FRET biosensor for the measurement of BCR-ABL activity in chronic myeloid leukemia cells.2017
Author(s)
Horiguchi M, Fujioka M, Kondo T, Fujioka Y, Li X, Horiuchi K, Satoh AO, Nepal P, Nishide S, Nanbo A, Teshima T, Ohba Y.
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Journal Title
Cell Structure and Function
Volume: 42
Pages: 15-26
DOI
Peer Reviewed
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