2016 Fiscal Year Research-status Report
歯原性上皮細胞におけるNGF-p75シグナルによる細胞増殖制御機構の解明
Project/Area Number |
16K20633
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
小野 真理子 東北大学, 大学病院, 助教 (60736031)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 神経成長因子 / 歯原性上皮細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は昨年度末までの研究で、歯原性上皮細胞においてNGFが低親和性受容体p75を介して細胞増殖の促進を行うことを明らかにしてきた。そこで、完全長p75(pEF6/p75)およびp75細胞内ドメインを欠失させた発現ベクター(pEF6/p75-ΔICD)を作製し、歯原性上皮細胞株(SF2細胞)に遺伝子導入をした。 細胞増殖についての比較をそれぞれの過剰発現細胞において行ったところ、完全長p75過剰発現細胞においては有意に細胞増殖が誘導されたが、p75-ΔICD過剰発現細胞では細胞増殖促進は認められなかった。 さらに、NGFがp75に結合した後のシグナル伝達経路についてウェスタンブロット法を用いて解析したところ、ERK1/2のリン酸化が強く認められた。また、ERK1/2の上流分子MEKの阻害剤U0126による処理を行ったSF2細胞において、阻害剤の濃度依存的にNGFによる細胞増殖が抑制された。このことからNGFはp75に結合後、その下流でERK1/2をリン酸化することにより歯原性上皮細胞の増殖シグナルを伝達していることが示唆された。 NGFと同じく神経栄養因子ファミリーに属するNT-4はTrkBに結合後、ERK1/2をリン酸化し歯原性上皮細胞の分化を促進することが明らかになっているが、こちらのシグナルとの比較(伝達経路、介在する分子の違い等)および細胞動態に与える影響についても解析を進めている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
歯原性上皮細胞においてNGFが低親和性p75に結合後、ERK1/2をリン酸化することにより細胞増殖のシグナルを伝達していることが細胞増殖比較実験より明らかとなった。また、ERK以外にp75の下流に存在する分子群についても同様の解析から明らかになってきている。 NGF-p75シグナルによる歯原性上皮細胞の増殖メカニズムについて解析するため、全長p75(pEF6/p75)とp75細胞内ドメインを欠失させた発現ベクター(pEF6/p75-ΔICD)を作製し、遺伝子導入をした。それぞれの過剰発現細胞を用いて増殖の比較検討を行った。その結果、完全長p75完全長p75過剰発現細胞において有意に細胞増殖が誘導されたが、p75-ΔICD過剰発現細胞では増殖促進は認められなかった。
|
Strategy for Future Research Activity |
最近の研究から、p75受容体はメタロプロテアーゼにより細胞外ドメインとC末端断片に切断され、さらにγ-セクレターゼにより細胞内ドメインが細胞基質に遊離されることが明らかになってきている。このような切断は、毛の発生で重要な機能を果たすNotchシグナルでも観察されることから、このp75の細胞内切断は、歯の発生において重要な役割を演じている可能性が示唆される。 そこで、p75発現ベクターにおいて、1)完全長、2)細胞外領域のみ、3)細胞内領域のみ、4)酵素切断部位の変異体の4種類の発現ベクターを作製し、各領域がNGF誘導性細胞増殖に及ぼす影響について検討していく。 また、NGF およびp75欠損マウスの歯の表現系について、胎生13~出生後7日までの臼歯歯胚を用いた組織学的検討を行う。さらにこれらのマウス歯胚より、歯胚細胞を初代培養することで、NGFおよびp75が完全に欠損した際の歯胚細胞の増殖や分化に及ぼす影響を検討する。
|
Causes of Carryover |
試薬等は既存のものを多く使用したため新たに購入したものが少なく、また学会発表を行えなかったため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の研究計画では新たに必要となる試薬の種類も増え、購入の必要が生じてくると思われる。また、研究成果についての学会発表も行う予定である。
|