2016 Fiscal Year Research-status Report
関節負荷に対する下顎頭軟骨の細胞外マトリックスの反応特性
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16K20651
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Research Institution | Health Sciences University of Hokkaido |
Principal Investigator |
中尾 友也 北海道医療大学, 歯学部, 助教 (90733048)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 下顎頭軟骨 / 関節負荷 / 細胞外マトリックス |
Outline of Annual Research Achievements |
下顎頭軟骨は頭蓋の中でも最も旺盛な成長を示す場growth siteの一つであり、顎顔面形態と咬合形成に大きな影響を及ぼす。そこで本申請研究は、下顎頭軟骨の生力学環境の変化に対する反応性を明らかにするためin vivo実験系において、生力学環境の変化が下顎頭軟骨の細胞外マトリックスの発現にどのような影響を及ぼすのかについて、mRNAおよびタンパク質レベルで分子生物学的に解明することを目指している。 初年度にあたる本年度は、本実験系で最重要となる下顎頭軟骨への荷重負荷のためのin vivo実験系の確立を主な目標とした。具体的には、下顎頭軟骨の反応性が高いと考えられる生後7週齢のWistar系雄性ラットを用い、顎関節部への荷重負荷を増大させるため、上顎切歯部にレジン製咬合板を装着し、臼歯部を離開させた。各実験期間終了後、トルイジンブルー(TB)染色による組織学的観察とreal-time PCRによるmRNAの発現変化を比較検討した。 結果は、実験群において各細胞層の厚径の増加を認め、さらに増殖細胞層においては細胞密度の減少ならびにTB染色性の低下が認められた。また、real-time PCR法によるmRNAの発現では、実験群においてaggrecan、biglycanのmRNA発現の亢進を認めた。これらの結果は、咬合改変モデルにより顎関節部への荷重負荷が増大すること、および本実験モデルが関節負荷に対する下顎頭軟骨の反応を検討する実験系として適していることを示している。さらに成長期ラット下顎頭軟骨は、関節荷重の増大によって組織学的変化および下顎頭軟骨の細胞外マトリックスの組成の変化を生じることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究調書の今年度の研究計画では、①下顎頭軟骨への荷重負荷のためのin vivo 実験の実施、②mRNA発現の定量、③水分含有量、GAG含有量、DNA量の定量、④タンパク質の局在の定性と発現の定量のための抗体の作製を予定としていた。 まず、下顎頭軟骨への荷重負荷のためのin vivo 実験の実施についてだが、咬合挙上を行った実験群において下顎頭軟骨の線維芽細胞層の肥厚、軟骨細胞層の厚径の増加とメタクロマジア反応の増加、未分化間葉系細胞層のメタクロマジア反応の低下および細胞数の減少などが確認できた。これらの所見から咬合改変モデルにより顎関節部への荷重負荷が大きくなること、および本実験モデルが関節負荷に対する下顎頭軟骨の反応を検討する実験系として適していることが確認できた。 次にmRNA発現の定量についてだが、本実験において下顎頭軟骨のRNAを抽出する際、軟骨と骨の単離が必須となる。しかし、下顎頭における軟骨と骨の境界は不明瞭であり、実験毎に再現性を持たせることが非常に困難であった。そのため下顎頭軟骨からのmRNA抽出の手技を確立するのに時間を要した。現在では、手技は確立され定量まで終了している。 上記理由により、水分含有量、GAG含有量、DNA量の定量がまだ実施できていないが、定量のための資料作製までは終了しており、今後定量を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の方策としては、mRNA発現変化の認められたproteoglycanに標的を絞り、タンパク質発現の定量を行う予定としている。また、現在では下顎頭全体におけるmRNA の定量のみしか実施していないが、レーザーマイクロダイセクション法を用いた各細胞層におけるmRNA発現変化および遺伝子組織化学染色によるmRNAの局在の観察も検討していく予定である。さらに、proteoglycan以外の弾性系繊維についても比較検討を行う予定である。
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Causes of Carryover |
研究調書に記した今年度の研究計画と比較し、現在の進捗状況は多少遅れている。そのため今年度行うはずであった研究計画の中で実施できていないものが存在し、その分が当該助成金である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度実施できなかった水分含有量、GAG含有量、DNA量の定量、およびタンパク質の局在の定性と発現の定量のための抗体の作製と合わせて来年度分の研究計画を遂行していく予定である。
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