2017 Fiscal Year Research-status Report
最終糖化産物とリポ多糖による骨細胞スクレロスチンの発現調節と骨代謝への影響
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16K20674
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
坂本 英次郎 徳島大学, 病院, 助教 (70771624)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 糖尿病関連歯周炎 / 最終糖化産物 / リポ多糖 / 骨細胞 / スクレロスチン |
Outline of Annual Research Achievements |
糖尿病関連歯周炎の病態を解明するため,マウス骨細胞株MLO-Y4-A2に最終糖化産物(AGE)と歯周病原細菌P.gingivalis由来LPSによる刺激を与え,培養を行った。昨年度の報告において,AGEとLPSは骨細胞におけるスクレロスチンおよびIL-6の発現を上昇させる事を報告した。本年度は,そのシグナル経路について検討を行った。 まず,siRNAを用いてAGE受容体(RAGE)およびtoll様受容体2(TLR2)のノックダウンを行った。RAGEおよびTLR2をノックダウンした骨細胞において,AGE誘導性,またはLPS誘導性スクレロスチンの発現が有意に抑制された。AGEおよびLPS誘導性スクレロスチン発現において,RAGEまたはTLR2の関与が示唆された。 ウェスタンブロット法において,AGEはJNKおよびERK-MAPKのリン酸化の亢進が認められたが,LPSではp38, JNK-MAPKのリン酸化の亢進が認められた。NF-kBはAGE添加,LPS添加いずれにおいてもリン酸化の亢進が認められた。さらに骨細胞培養系にMAPKおよびNF-kB阻害剤を添加し,AGEおよびLPSによる刺激を与えスクレロスチン発現の定量を行った。JNK,ERKおよびNF-kB阻害剤はAGE誘導性スクレロスチンの発現を有意に抑制した。一方,p38, JNKおよびNF-kB阻害剤はLPS誘導性スクレロスチンの発現を有意に抑制した。AGEおよびLPSによるスクレロスチン発現の誘導において,MAPKおよびNF-kB経路が関与していることが示唆された。 以上の結果より骨細胞においてはAGEおよびLPSが,RAGE, MAPK, NF-kB経路とTLR2, MAPK, NF-kB経路の2経路を介し,スクレロスチンの発現を誘導することによって糖尿病関連歯周炎の病態悪化に寄与しているものと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度における研究予定内容は,AGEおよびLPSによるスクレロスチン発現の誘導におけるシグナル経路を解明することであった。研究実績の報告に示すように,骨細胞におけるスクレロスチン発現にはRAGEまたはTLR2,そしてMAPK,NF-kB経路が関与している可能性を発見した。一方,PI3K/Akt経路やJAK-STAT経路など他の経路の探索にも務めたが,有意な実験データを得ることが出来なかった。1経路のみならず,複数のシグナル伝達経路の関与を疑っているが,未だ全貌の解明には至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
報告書に示す通り,AGEとLPSはMAPKおよびNF-kB経路を介し,骨細胞のスクレロスチン発現を誘導することを示してきた。しかし,AGEおよびLPSによって発現誘導されたスクレロスチンの機能については未解明の点が多いのが現状である。今後,AGEおよびLPS誘導性スクレロスチンの機能を解明するため,骨細胞と骨芽細胞の共培養系を確立し,骨芽細胞に対する影響について検討する予定である。 過去の報告において骨細胞と骨芽細胞の共培養を行った報告は極めて少なく,参考とする文献が不足している。我々の研究室では,過去に骨芽細胞を用いた実験系を数多く報告してきたが,その培養手法を参考とし,共培養系の確立に務める予定である。また,本研究を遂行する上で,AGEおよびLPSの刺激条件,共培養条件など様々な因子の関与が考えられるため,十分な予備実験を行い,実験条件を検討することが重要と考える。それにより,全体的な研究予算の節約に繋がると考えるからである。
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Causes of Carryover |
本年度は高価な抗体,阻害剤を多数使用する予定であったため経費として請求していたが,安価で効果的な試薬を探し,経費節約に務めた結果次年度使用額が生じたものと考える。次年度使用額および翌年度請求分については,細胞の共培養系の確立において高価な実験機器を必要すると考えられるため,それに充てることにより研究の進行をさらに加速させる予定である。また本研究によって得られた内容については,国際学会における発表,さらに論文の執筆(英文校正),投稿を予定しているため,それらの費用として使用する。
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