2016 Fiscal Year Research-status Report
新規根面う蝕細菌種を標的とした高齢者QOL向上法の開発
Project/Area Number |
16K20696
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
小幡 純子 鹿児島大学, 医歯学域附属病院, 助教 (70759448)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | P. acidifaciens / Propionibacterium属 / 根面う蝕 / う蝕細菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、P. acidifaciensのう蝕原性を解明するため、P. acidifaciensの凝集能、ハイドロキシアパタイトへの付着能、コラーゲンへの結合能、過酸化水素を産生する他の口腔細菌への抵抗性について検討を行った。 1. P. acidifaciensの凝集能を調べたところ、唾液成分による凝集をほとんど生じず、さらに他の口腔内常在菌(S. mutans MT8148、S. sanguinis ATCC 10556、S. oralis ATCC10557、S. gordonii ATCC10558)との間に共凝集は認められなかった。2. P. acidifaciensのハイドロキシアパタイトへの付着能の検討: P. acidifaciensは唾液被覆ハイドロキシアパタイトへ付着した。3. P. acidifaciensのコラーゲンへの結合能の検討: P. acidifaciensはコラーゲンへ強く結合した。4. P. acidifaciensの過酸化水素産生菌への抵抗性の検討: P. acidifaciensは過酸化水素産生菌への抵抗性がなかった。ただし、過酸化水素非産生菌に対しても抵抗性がなかったため、他の因子に関しての検討が必要である。 以上より、P. acidifaciensは、象牙質内に存在する無機成分であるハイドロキシアパタイトへの付着に加えて有機成分であるコラーゲンへの強い結合を示したことから、象牙質内の有機質がP. acidifaciensの定着を促進している可能性が示唆された。また、P. acidifaciensの過酸化水素産生菌への抵抗性がなかったことから、他の口腔内細菌とどのように共生しながらバイオフィルムを形成するかの検討が必要であると考え、次年度の検討事項とする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初から計画していたP. acidifaciensのう蝕原性の解明に関する検討は順調に進められた。しかし、さらなる検討事項ができたことから、次年度の研究内容に追加ができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、P. acidifaciensのバイオフィルム形成能に関して、酸濃度及びS. mutans産生物の影響を調べることとする。さらに、P.acidifaciensの心脈管系疾患との関連を解明するため、P. acidifaciensの心内膜組織への結合能、血管内皮細胞への侵入能と炎症性因子の誘導能について検討を行う。 1. P. acidifaciensのバイオフィルム形成能の検討: 1) P. acidifaciensが産生するプロピオン酸と酪酸の濃度により、バイオフィルム形成能が変化するかを調べる。2) P. acidifaciens がバイオフィルムを形成する際に、S. mutans産生物の有無がその形成能に影響を与えるかを調べる。2. P. acidifaciensの心内膜組織への結合能の検討 (ELISA法): 1) 心内膜を構成する成分 (ラミニン、コラーゲン、フィブロネクチン) で96ウェルマイクロプレートを被覆する。2)ビオチンで標識したP. acidifaciensを用いて、各成分への結合を調べる。3. P. acidifaciensの血管内皮細胞への侵入能の検討: 1) ヒト動脈内皮細胞を5% CO2下で24時間培養する。2) P. acidifaciensを培養上清に加え、ヒト動脈内皮細胞と共培養する。3) 一定時間経過後、培地中および内皮細胞表面に存在するP. acidifaciensを抗生剤で処理する。4) 内皮細胞を回収してTween 20で処理し、内皮細胞に侵入した菌を回収する。5) 回収した菌液をBHI 培地にて嫌気的に培養し、内皮細胞に侵入したP. acidifaciensを定量する。4. P. acidifaciensの血管内皮細胞における炎症性因子誘導能の検討: 1) P. acidifaciensとヒト動脈内皮細胞を培養した後の培地および内皮細胞を回収する。2) 培地中のIL-6、IL-8、MCP-1をELISA法で定量し、非感染内皮細胞と比較する。3) 内皮細胞中のICAM-1、VCAM-1、Selectin 量をcell ELISA 法で定量し、非感染内皮細胞と比較する。 以上のデータを総括し、論文作成、投稿を行う予定である。
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Causes of Carryover |
物品費としての消耗品であるプラスチック製品等の消費や旅費としての学会発表に係る費用が予想よりも少なかった為、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
H28年度の研究成果を受けて、P. acidifaciensのバイオフィルム形成能に関して酸濃度及びS. mutans産生物の影響を調べることをH29年度の研究内容に追加した。その為必要物品等の追加も必要となることから、この費用を使用する予定である。
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