2017 Fiscal Year Research-status Report
高齢者の健康寿命延伸をめざす第一次・二次予防での歯槽骨再生法の開発
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16K20703
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Research Institution | The Nippon Dental University |
Principal Investigator |
伊井 久貴 日本歯科大学, 生命歯学部, 講師 (00746604)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 歯学 / 細胞・組織 / 再生医学 / 衛生 / 骨再生 |
Outline of Annual Research Achievements |
高齢化が進む我が国において、歯牙喪失を始めとする口腔機能低下から国民を守り、健康寿命の延伸を図ることは喫緊の課題である。その中で、55~64歳における有病率が80%を超える歯周疾患、なかでも歯肉炎、歯周炎の悪化によって生じる歯槽骨欠損状態からの機能回復が可能となれば高齢者のQOL向上のみならず、増加の一方をたどる国民医療費の大幅な改善が見込める。 本年度はヒト線維芽細胞で安定的な石灰化現象が確認されないため、細胞種・播種法等を変更して再実験を行った。 細胞はヒト歯髄細胞、ヒト歯肉上皮細胞、ヒト歯肉線維芽細胞を使用し、石灰化の誘導を図るため、Micromass culture法と単層培養でそれぞれ播種した。2-3日培養後、アスコルビン酸とβ-GPを添加した培養液(石灰化培地)に切り替え、3日ごとに培養液を換えながら、3週間培養した。石灰化の評価は、アルカリフォスファターゼ染色とフォンコッサ染色で行った。染色後、それぞれ顕微鏡下で観察の後、写真を撮り、画像解析ソフトを使用して染色されたエリアの解析を行った。 Micromass culture法下での培養では、各細胞とも有意な石灰化能の上昇は確認されなかった。単層培養においてもヒト歯髄細胞、ヒト歯肉上皮細胞では有意な差がみられなかったが、ヒト歯肉線維芽細胞ではALP活性と石灰化物の析出において石灰化培地群で有意な上昇がみられた。 ヒト歯肉線維芽細胞において単独で骨形成能を持つ細胞への分化の可能性が示唆された。これにより、新たな歯周治療法の開発、すなわち、第二次予防での歯周炎の初期治療への貢献が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は前年度においてヒト線維芽細胞で安定的な石灰化現象が確認されなかったことを受け、細胞種・播種法等を変更して再実験を行った。 細胞はヒト歯髄細胞、ヒト歯肉上皮細胞、ヒト歯肉線維芽細胞を使用し、石灰化の誘導を図るため、Micromass culture法と単層培養でそれぞれ播種した。2-3日培養後、アスコルビン酸とβ-GPを添加した培養液(石灰化培地)に切り替え、3日ごとに培養液を換えながら、3週間培養した。石灰化の評価は、アルカリフォスファターゼ染色とフォンコッサ染色で行った。染色後、それぞれ顕微鏡下で観察の後、写真を撮り、画像解析ソフトを使用して染色されたエリアの解析を行った。 Micromass culture法下での培養では、各細胞とも有意な石灰化能の上昇は確認されなかった。単層培養においてもヒト歯髄細胞、ヒト歯肉上皮細胞では有意な差がみられなかったが、ヒト歯肉線維芽細胞ではALP活性と石灰化物の析出において石灰化培地群で有意な上昇がみられた。 播種条件を変えたことで、比較的安定して石灰化現象がみられるようになったと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、播種条件の違いにおいて異なる現象が生じたことの解明を行いたい。その後は石灰化物の構造に関して、その構造がハイドロキシアパタイトであるのか、それともカルシウム沈着かを判定する。また、ALP活性がみられたので、それを量的にも判定する。 そして、異所性石灰化関連遺伝子であるTNAP(組織非特異的アルカリフォスファターゼ, ALP)、RUNX2、SPP1(オステオポンチン, OPN)、MGP(マトリックスGlaプロテイン)、ANK、ENPP1などの遺伝子の発現を検討し、異所性石灰化の促進・抑制の調節メカニズムを解明する。 同時に、間葉系マーカーであるCD29・CD105・CD90、Sox2、Oct3/4などの多能性マーカーやSSEA-4などの未分化細胞マーカーの発現もPCRで検討する。そして、エムドゲイン、あるいはALPを維持するステロイド剤、フェノバルビタールを併用実験を行う。 さらに、実際の歯周組織再生に応用できるか検討するため、現時点でin vitroで石灰化したラット歯髄線維芽細胞をラット歯周炎モデルに移植し、上記エムドゲイン等の併用も行い、歯槽骨レベルの完全回復をめざし、人の歯周炎ににおける骨欠損への応用を検討する。
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Causes of Carryover |
(理由) 昨年度からの課題であった、培養実験における石灰化度の個体間のばらつきが大きい点について本年度では細胞種・播種方法からの検討を行った。細胞はヒト歯髄細胞、ヒト歯肉上皮細胞、ヒト歯肉線維芽細胞を使用し、石灰化の誘導を図るため、Micromass culture法と単層培養でそれぞれ播種した。2-3日培養後、アスコルビン酸とβ-GPを添加した培養液(石灰化培地)に切り替え、3日ごとに培養液を換えながら、3週間培養した。石灰化の評価は、アルカリフォスファターゼ染色とフォンコッサ染色で行った。染色後、それぞれ顕微鏡下で観察の後、写真を撮り、画像解析ソフトを使用して染色されたエリアの解析を行った。単層培養においてもヒト歯髄細胞、ヒト歯肉上皮細胞では有意な差がみられなかったが、ヒト歯肉線維芽細胞ではALP活性と石灰化物の析出において石灰化培地群で有意な上昇がみられた。細胞腫を広げたことにより費用はかかったものの、当初計画していたタンパク発現や遺伝子発現、さらには動物実験は行えていない。 (使用計画) 本研究継続の為、歯肉線維芽細胞の分離と細胞を用いた様々な実験が主体となるため、研究経費の多くは歯肉線維芽細胞の分離と培地、各遺伝子プライマー、シグナル伝達解析の抗体などの消耗品に当てる予定である。
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Research Products
(1 results)