2016 Fiscal Year Research-status Report
認知症予防のための食事指導と口腔管理の相乗効果に関する研究
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16K20710
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
須磨 紫乃 九州大学, 歯学研究院, 助教 (70759365)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 認知症 / 軽度認知障害 / 食欲 / 食行動関連障害 / 栄養状態 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、軽度認知障害者において食事や口腔状態が与える影響について検証することである。そこで国立長寿医療研究センターもの忘れ外来に来院した者のうち、特に軽度認知症と診断された者を対象に、食行動や口腔状態が食欲の維持・向上を介して全身状態(認知機能や栄養状態、体組成など)に与える影響を検討する。さらに食事指導と口腔管理の介入調査をすることにより、これらの指導・管理が軽度認知障害者の認知機能や栄養状態、運動機能などの低下を抑制する可能性についても検証する。 研究計画1年目である平成28年度は、本研究の倫理申請、及び本研究を推進するための根拠となる食事や口腔状態と栄養状態、認知機能、体組成などの関連を得るため、先行研究の収集と平成27年度までに来院した者の情報を収集・整理した。さらにそのデータをもとに軽度認知障害者(506名)、及びアルツハイマー型認知症患者(1,132名)の食欲の低下に関連する因子について横断的に比較検討した。その結果、軽度認知障害者では食事中の注意が維持できないこととうつ状態が有意に食欲に関連しており、これらはアルツハイマー型認知症患者でも同様の関連が認められたが、軽度認知障害者においてより強い関連がみられた。また縦断的解析を行うため2回以上来院した者を対象に解析を行ったが(2回以上来院した者377名、うち軽度認知障害者90名、アルツハイマー型認知症患者286名)、食欲や食行動、認知機能とその他の因子に有意な関連は認められなかった。そこで今後はさらに対象者を増やし、軽度認知障害者の経時的な認知機能や栄養状態、身体機能の変化を調査し、食欲や口腔状態がこれらに影響しているかを検討していく予定である。 また介入調査については、先行研究や前述の解析において口腔状態と全身状態では関連が認められなかったことや患者負担などの倫理的配慮により調査開始を延期している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初、平成28年度後半より食事指導と口腔管理の介入調査を開始予定だったが、先行研究において軽度認知障害者における口腔状態と全身状態との関連を報告したものがないことや、前述の解析は横断的なものであり因果関係が不明なこと、また患者負担などの倫理的配慮により調査開始を延期している。
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Strategy for Future Research Activity |
横断解析では軽度認知障害者では食事中の注意が維持できないこととうつ状態が有意に食欲に関連していることが示唆されたが、縦断解析では軽度認知障害者の人数が少なく有意な関連は認められなかった。平成29年度はさらに対象者を増やし、軽度認知障害者の認知機能や栄養状態、体組成などの変化に食事や口腔状態が影響を与えているかを検討していく予定である。また縦断的検討、及び他の研究において軽度認知障害者の口腔状態と全身状態との有意な関連が得られ次第、食事指導と口腔管理の介入調査を始めたいと考えている。さらにもの忘れ外来に来院され方は他にも様々な研究に参加しており、今後介入調査を実施するにあたり患者負担を削減する調査体制を整える必要があると考えている。
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Causes of Carryover |
予定より倫理審査による研究の実施許可を得るのが遅くなったため、当初平成28年度に使用を予定していた人件費を平成29年度に使用する予定である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度使用予定だった人件費を平成29年度の人件費に充て、当初予定していたデータと同量のデータを収集できるようにする。
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Research Products
(2 results)