2016 Fiscal Year Research-status Report
皮下脂肪細胞に着目した肥満による真皮エラスチン減少のメカニズム解析
Project/Area Number |
16K20720
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
槇原 弘子 横浜市立大学, 医学研究科, 嘱託員 (00708696)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 肥満 / 皮膚 / エラスチン / 脂肪 |
Outline of Annual Research Achievements |
肥満はメタボリックシンドロームなどの多く疾患の原因として、その予防および治療に関する研究が世界的な規模で取り組まれており、我が国においても国民における関心は非常に高い。一方で、乾癬などの慢性皮膚疾患の発症、褥瘡有病率、創傷治癒の遅延などに関しても肥満との関連が報告されている。しかしながら肥満による皮膚障害に関して、その発症メカニズムや予防ケア方法に関する研究報告は非常に少ないのが現状である。皮膚のケアは健康維持の観点からも非常に重要であり、患者のケアや生活の支援を行う看護分野にとって非常に重要な課題である。 本研究は肥満にともなって生じる皮膚の脆弱性に着目し、肥満による真皮エラスチン線維の減少とその発症メカニズムを検証することで科学的根拠に基づくケア方法の開発へと応用することを目的としている。 これまでのところ、多因子遺伝性の肥満モデルマウスを用いた背部皮膚組織の解析の結果、真皮におけるエラスチン線維の減少および断片化が明らかになっている。また、そのメカニズムとして、エラスチン前駆物質、合成酵素、分解酵素の発現変動をそれぞれRT-PCR法を用いて解析し、前駆物質のfibrillin-1 、分解酵素のneprilysinに有意な発現変動が認められた。またneprilysinに関しては、免疫染色法によりタンパクレベルでの変動も確認されたため、肥満にともなう真皮エラスチン線維減少および断片化のメカニズムの一つであることが示唆された。これらの結果に関しては、学会および論文として発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
多因子遺伝性の肥満モデルマウスを用いた背部皮膚組織の解析の結果、真皮におけるエラスチン線維の減少および断片化が明らかになった。次にそのメカニズムとして、エラスチン前駆物質、合成酵素、分解酵素の発現変動を解析し、前駆物質のfibrillin-1 、分解酵素のneprilysinに有意な発現変動が認められた。これらの発現変動が肥満にともなう真皮エラスチン線維減少および断片化のメカニズムの一つであることが示唆され、この結果をまとめて学会および論文として発表した。 また、より網羅的なタンパクレベルでの解析を実施することを目的とし、表皮と真皮に分離したサンプルを用いて、プロテオミクス解析を行った。現在結果の解析を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、真皮エラスチン線維減少のメカニズムとして、真皮線維芽細胞の数および活性の変動を解析する。また、表皮、真皮それぞれのプロテオミクス解析より、変動の認めらた因子の発現および局在について確認試験を行うとともに、真皮エラスチン線維の形成を制御する分子を絞り込む。
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Causes of Carryover |
平成28年度に得られた結果をもとに論文の投稿を前倒しにしたため、研究計画に変更が生じた。そのため、平成28年度に行なう予定の実験内容のうち、線維芽細胞に関する解析を平成29年度に変更することによって繰越金が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度繰り越し1,065,266円は、肥満にともなう線維芽細胞の変化を解析するため、新たに細胞培養の実験系を立ち上げる際に必要となる物品類や、タンパク解析に必要な物品および試薬等に使用する予定である。
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