2016 Fiscal Year Research-status Report
訪問看護師のリスク管理に関する安全教育プログラムの構築
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16K20724
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Research Institution | The University of Shimane |
Principal Investigator |
吉松 恵子 島根県立大学, 看護学部, 助教 (30642657)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 訪問看護 / リスク管理 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、訪問看護ステーションにおけるリスク管理の取り組みの現状と課題、関連する背景要因を明らかにすることを目的に研究を実施した。訪問看護ステーションにおけるリスク管理について文献検討を行った。医学中央雑誌Webで抽出した文献(会議録は除く)について、「訪問看護ステーションにおけるインシデント、アクシデント、リスク管理とは何か」についての記述を抽出した。各キーワードに対して抽出された文献は「訪問看護」×「リスク管理/リスクマネジメント」251件、「インシデント」19件、「アクシデント」11件であった。このうち、訪問看護師の援助に関連したリスク管理について述べられている文献8件を抽出した。文献をもとに、インシデント「エラーや過失等があったが、療養者に対し傷害には至らなかった事例」、アクシデント「エラーや過失等により、療養者に対し傷害が発生した事例」、リスク管理「訪問看護師の質の確保やヒューマンエラー対策などの医療事故防止への取り組みや医療事故に対する組織的な対応」とした。文献では、インシデント・アクシデントの対象を療養者に限定しているもの2件、訪問看護師に限定しているもの1件、療養者・訪問看護師両方としているもの5件であった。その原因を訪問看護師の行為によるものだけではなく、利用者や介護者の行為によるものも含むものもあり、訪問時間以外のリスク管理について述べられているものもあった。これらのことより、訪問看護におけるリスク管理は対象となる人やインシデント・アクシデントの原因など様々なとらえ方があることが明らかになった。訪問看護師のリスク管理に関する認識と取り組みの現状を明らかにすることを目的に、島根県内のステーションを常勤換算の規模により3群にわけ、研究協力の得られた訪問看護師12名程度にリスク管理についてどのように捉えているか、どのような取り組みをしているのかを調査している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
インタビュー調査を実施するにあたり、先行研究や文献より訪問看護師には様々なリスク管理に対するとらえ方があることが明らかになった。そのため、調査方法としてより幅広い情報内容を引き出すことのできることや相互作用による意見の引き出しができるフォーカスグループインタビューの手法を用いた研究を計画した。倫理審査の承認が得られ島根県に指定訪問看護ステーションとして登録されている全訪問看護ステーションに対し、フォーカスグループインタビューへの協力依頼をし、研究協力者の応募を行った。しかし、事業所の人員不足などの諸事情によりグループインタビュー法で一致できる参加者を調整することができなかった。研究者がステーションを訪問する個別インタビュー調査で再審査する必要性が生じた。再度、文献により、より深い情報が得られるようにインタビューガイドの精査、倫理審査の変更を行い、実施時期が延期することになった。現在、倫理審査の再承認を得て、参加者と日程調整しインタビューを開始している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は現在実施している訪問看護師を対象としたリスク管理に関する認識と取り組みの現状を明らかにすることを目的としたインタビュー調査を継続実施する。事前調査とあわせてリスク管理の現状と背景要因の仮説をたて、訪問看護師の安全意識を高めるために優先される課題を検討する。その後、安全教育プログラム研修1回目の内容、実施時期の検討を行う。研修の内容は医療安全管理に必要な基礎知識の学習と調査結果により明らかとなったリスク管理の現状や関連する背景要因、課題を分析することで、訪問看護師が使いやすい報告用紙の作成と活用方法を検討する。研修内容の検討とともに島根県内の訪問看護ステーションに研究への参加協力を依頼する。 平成30年度は、安全教育プログラム研修の実施をする。1回目の実施後、各ステーションにて研修内容の伝達講習や報告用紙の試用などの取り組みを実施し、2回目の研修にてインシデント、アクシデント発生時の対応や検討事例の報告等を通し、報告用紙や活用方法の再検討を行う。この一連の流れの成果物としてテキストを作成する。安全教育プログラム実施前後には、参加者の所属する訪問看護ステーションのすべての看護職を対象にアンケート調査を実施する。内容は、ステーションの医療安全体制の変化やインシデント、アクシデントの発生件数と報告用紙の活用実態、訪問看護師のリスク管理に対する取り組みへの参加状況や意識の変化を調査する。 研修の実施に関して、訪問看護ステーションの人員不足等の状況により研究協力者の依頼が困難になる状況が予想される。平成29年度の研修内容の検討とあわせて、参加しやすい実施時期や場所等を考慮することとする。
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Causes of Carryover |
平成28年度に予定していたインタビュー調査において、フォーカスグループインタビューを予定していたが、訪問看護ステーションの人員不足等により参加協力が得にくく、個別のインタビューに変更したため、現在インタビュー調査を継続している。そのため、インタビュー調査のデータ分析と学会発表論文作成などの報告を平成29年度に実施する予定のため、次年度分として使用する必要がある。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
インタビュー調査で得られたデータ分析のために、テープ起こし等の経費が必要である。また、調査内容の分析には訪問看護、リスク管理に関連した幅広い領域での知識が必要であり、研究進行に応じた関連図書の購入を予定している。また、研究成果を国内の学会で発表する予定とし、旅費および学会参加費として使用する。
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