2016 Fiscal Year Research-status Report
意識障害者の意図的な感情表出の解明:表情分析を用いた基礎的研究
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16K20781
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Research Institution | Osaka Medical College |
Principal Investigator |
肥後 雅子 大阪医科大学, 看護学部, 助教 (30432313)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 意識障害 / 表情分析 / 感情反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、協力を得られる病院における倫理委員会の承認を得ることができた。その後、脳損傷による意識障害と診断され、医師の許可が得られた方2名に対し表情の動画撮影を実施した。撮影中の対象者を取り巻く要因や環境(照度、騒度、温度、湿度)、ケア、声掛けなどすべての事象と時間を記録した。また、撮影開始前に、カルテあるいは対象者の家族から、現病歴、既往歴、治療内容、意識障害の程度についてGCS(グラスゴーコーマスケール)あるいはNASVAスコアを用いてスコアリングした。撮影時間は、1名につき12時間(4時間×3回)であり、それを1/15秒単位でフェイスリーダーで数値化したデータを経時的に評価した。フェイスリーダーにより、Valence(快-不快)値を算出し、心拍数とValence値の経時変化記録をすべてエクセルで作成した。経時変化を見やすくするために、1分毎のValence値の平均値及び心拍数の平均値を算出し、それを折れ線グラフ化して、刺激と照らし合わせることとした。 対象者2名について、快-不快及び生理学的評価について検討したところ、動画内容詳細のValence値の変動が大きい部分と同様に心拍数の変動もみられていた。このことより,表情分析による快・不快の変動は,生理学的な変動と同様の指標として使用できる可能性を示唆していると考えている。また,感情反応がないといわれている意識障害者のValence値の変動が,刺激毎に何度もみられていることは,今年度得られた最大の成果である。しかし,コントロールが不十分であり,反射であったことをすべて否定することはできなかったため,同一の刺激に対し同一の感情反応が得られているかを明らかにすることが次年度の課題として挙げられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
病院に入院されてから転院されるまでの期間での研究実施タイミングがあわなかったことや、在宅で過ごされている方の体調の変化などの理由から、対象者の方々に合わせて研究を実施していくことが難しい場合があった。さらに、顔面の撮影を実施しているが、光の加減や、原因不明の理由からフェイスリーダーでの分析が不可能であったこともあった。また、1名あたりのデータ数が1回撮影ごとに20万以上であり、エクセル操作に多大な時間を要する為、データの整理に時間を要している。しかし、2名の方に対してはきっちり撮影および分析ができているので、その方々のデータをより詳細に分析することは可能である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、現在得られている2名の方のデータを更に詳細に分析し、1/15秒単位でAUの変化を検討してく予定である。今回AUとしての変化を見る顔面のポイントは、AU1(眉の内側を上げる)、AU2(眉の外側を上げる)、AU4(眉を下げる)、AU5(上瞼を上げる)、AU6(頬を持ち上げる)、AU7(瞼を緊張させる)、AU9(鼻にしわを寄せる)、AU10(上唇を上げる)、AU12(唇両端を引き上げる)、AU14(えくぼをつくる)、AU15(唇両端を下げる)、AU17(下顎を上げる)AU18(唇をすぼめる)、AU20(唇両端を横に引く)、AU23(唇を固く閉じる)、AU24(唇を押しつける)、AU25(顎を下げずに唇を開く)、AU26(顎を下げて唇を開く)、AU27(口を大きく開く)、AU43(閉眼)の20ポイントとする。 29年度はすでに2名の方の撮影が予定であり、その方々の撮影を緻密に実施する。
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Causes of Carryover |
購入予定であった携帯型脳活動計測装置であるが、装置そのものが顔表情に影響を与えることを鑑み、購入を見合わせることとした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
新たな分析方法を実施するにあたり、分析に要する膨大な時間を削減するために研究補助に対する謝金などにあて、データの整理などの時間を節約し分析に時間をかけたいと考えている。
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