2018 Fiscal Year Research-status Report
行動量と自律神経機能同時測定デバイスによる介護支援システムの構築
Project/Area Number |
16K20817
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Research Institution | Shiga University of Medical Science |
Principal Investigator |
角 幸頼 滋賀医科大学, 医学部, 医員 (10772923)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | レム睡眠行動障害 / 認知症 / パーキンソン病 / 起立性低血圧 / 自律神経障害 / 転倒 / 介護 / ウェアラブルデバイス |
Outline of Annual Research Achievements |
高齢社会を迎え、認知症高齢者とそれに伴う介護・看護負担は増加の一途をたどっている。高齢者の認知症発症あるいは増悪因子として転倒・骨折が挙げられるが、その要因として、起立性低血圧(orthostatic hypotension: OHT)が頻繁に指摘されている。OHTは、運動負荷と自律神経機能調節の乖離が原因と考えられるが、自律神経機能は自覚されにくく、容易に変動してしまうため、評価が困難であった。一方近年のウェアラブル端末の発展により、日常生活中の様々な生理指標を継続計測できるようになった。本研究では、心拍変動(heart rate variability: HRV)と加速度を指標に、自律神経機能と運動負荷状況を経時的に定量評価し、自律神経障害の定量的評価を行う。これにより、OHTの発症リスクを適切に行い、ケアの最適化を行う。さらに、転倒予防を行うことで、健康寿命の増進を目指す。 平成30年度は、レム睡眠行動障害の患者を対象に、臨床的情報の収集を行い、起立性低血圧試験を実施できた。今回収集した臨床的な情報(レム睡眠行動障害の重症度、認知機能低下、嗅覚障害の程度など)を参照することで、起立性低血圧をきたすリスク因子を同定していく。また、起立性低血圧試験時に記録した、活動量および心拍変動の情報を解析した。その際、高齢者特有の問題を検出した。すなわち、高齢者では高血圧や不整脈の併存症が多いため、心拍変動解析におけるエラーが生じる。このため、当初想定していた周波数領域の解析は不適と判断し、別の解析方法をとることとした。その際、不整脈による心拍変動検出エラーを除くためのプログラムを作成し、その妥当性を検証した。 レム睡眠行動障害患者の臨床的な知見(認知機能低下とドパミン神経系の変性の関連)について、国内および国外での学会発表を行った。また国内の学術雑誌および書籍に臨床的知見を報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
心拍変動解析に際して、高齢者特有の問題の解決に時間を要した。高齢者では高血圧や不整脈の併存症が多いため、心拍変動解析におけるエラーが生じたため、それを解決するためのプログラム作成に時間を要した。これまでの、高齢者を対象とした心拍変動解析に関する文献からは、エラー除去の方法を見つけることができなかった。ポワンカレ解析という、想定していた手法と異なる解析方法に着目することで、エラーに関する妥当性の確立された補正手法を適当することができた。 現在、不整脈の検出よびエラー除去の問題は解決できたため、当初想定していたものと別の解析手法を用いて心拍変動解析にあたる予定である。以上、想定していなかったデータの補正に関する問題のため、研究は予定よりやや遅れる結果となった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、レム睡眠行動障害患者だけでなく、健常者における同様の実験を遂行していく。これにより、健常者および患者(自律神経障害を高率に合併する)で群間比較することで、軽微な自律神経障害が心拍変動および血圧低下に与える影響を検出する。また、起立前(すなわち臥位の状態)の心拍変動情報から、起立後の血圧低下の予想が可能であるかを検証する。 また、患者群において、起立性低血圧に関連する臨床情報を探索的に検討することで、転倒のリスク因子を同定する。さらに、加速度系や心拍変動解析の情報がリスク因子となるかどうかも検討する。転倒のリスク因子を同定することで、将来必要な介護・看護負担の見積りに寄与するものと考える。ウェアラブルデバイスの介護場面での応用も期待される。 これらの研究結果を学術誌に報告する予定である。
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Causes of Carryover |
本研究は想定よりも進捗が遅れている。その理由は、取得したデータを解析する際のエラー除去のプログラム作成に時間を要したためである。これにより、実験のデータ収集フェイズが遅れることとなった。このため、謝金を次年度に持ち越すこととなった。また、今後データ収集・解析を行い、研究結果をまとめる段階になると、結果報告のため学会への参加や学術雑誌への報告を予定している。このための出張費や投稿費が必要である。この使用目的でも支給額を次年度に繰り越さざるを得なかった。
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