2016 Fiscal Year Research-status Report
在宅で過ごす認知症療養者のスピリチュアルペインの把握
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16K20820
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
沖 亞沙美 香川大学, 医学部, 助教 (70774024)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 認知症高齢者 / スピリチュアルペイン / 在宅 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題の研究目的は、在宅で過ごす認知症療養者のスピリチュアルペインを把握することである。認知症高齢者は、自己存在の喪失に関わる苦しみを抱えていると考え、認知症療養者はスピリチュアルペインをどの程度抱えているか調査し、把握していくことが必要であると考えた。 当該年度の研究実施計画は、①研究会議を開催し、文献研究結果、役割分担の遂行状況、調査設計の検討を行うこと、②ニューヨーク大規模事業所への実地調査、③臨床パストラルケア教育研究センターの研修会への参加、④スピリチュアルケアカウンセラーの実際の活動状況を調査、⑤関連学会への参加と情報収集、⑥5事例の調査研究、の予定であった。 研究の目的にそって、認知症療養者のスピリチュアルペインの捉え方をまず明らかにするために文献研究を行い、国外文献においては、香川大学チェンマイ大学国際シンポジウムにおいて、ポスター発表を行った。国内文献においては、第36回日本看護科学会において、ポスター発表を行った。文献研究の結果から、認知症高齢者のスピリチュアルペインには、自己存在の喪失と実存的苦悩について共通点が認められた。 臨床パストラルケア研究会に参加し、スピリチュアルケアカウンセラーの日本における活動報告を受けた。認知症高齢者へ関わる中でスピリチュアルケアを行っていることがわかった。 ニューヨークへの実地調査に関しては、ヒアリング調査を依頼しているが、難航しており、現在、アメリカ全土の在宅ホスピスを対象に広げ、調査依頼を継続して行っている。 研究協力者と話し合いの中で、対象を認知症高齢者に絞ること、スピリチュアルペインの構成要素の抽出を試みる計画へと変更し、研究の明確性を高めるよう検討がなされた。これらのことを踏まえ、在宅ですごす認知症高齢者のスピリチュアルペインの構成要素の抽出を行うために香川大学医学部の倫理審査委員会に申請の準備をしている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当該年度の研究実施計画は、①研究会議を開催し、文献研究結果、役割分担の遂行状況、調査設計の検討を行うこと、②ニューヨークへの実地調査、③臨床パストラルケア教育研究センター研修会への参加、④スピリチュアルケアカウンセラーの実際の活動状況を調査、⑤関連学会への参加と情報収集、⑥5事例の調査研究、の予定であった。 現在、①研究協力者との打ち合わせを繰り返し行い、文献研究結果、役割分担の遂行状況、調査設計の検討を行うこと、③臨床パストラルケア教育研究センター研修会への参加、④スピリチュアルケアカウンセラーの実際の活動状況を調査、⑤関連学会への参加と情報収集、を実施している。実施した内容の結果を受けて、研究協力者との話し合い研究計画書を修正した。そして、在宅で過ごす認知症高齢者のスピリチュアルペインの構成要素の抽出を行なうために、香川大学医学部の倫理審査委員会へ申請書を準備している段階である。認知症高齢者の当事者研究の方法や結果の明確性、データの分析方法について、多角的な視点で批判的考察を受けながら、より研究の妥当性、信頼性を確保のための調査設計の検討を繰り返している。 米国ニューヨークの大規模事業所へメールで、ボランティアとしての受け入れを依頼しているが、現段階において、受け入れの許可がでていない。米国の在宅ホスピスでホームページ上では、看護師やチャプレンがスピリチュアルケアについて行っていることが明らかにされている。ニューヨーク州に限らず、米国全土の在宅ホスピスにボランティアとしての受け入れ依頼を継続して行っていく。
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Strategy for Future Research Activity |
認知症高齢者の当事者研究を行うこと、スピリチュアルペインの研究を行うこと、それぞれ、専門的な判断を要し、得られたデータの妥当性と信頼性を確保するために、認知症の専門職者あるいは有識者を研究協力者に迎えスーパーバイズを受けながら研究を進めていく必要があると考える。また、研究対象者を認知症高齢者の当事者としているが、今後は、認知症高齢者と関わるスピリチュアルケアワーカーにするなど、当事者研究から、専門職者への研究へとシフトさせていくことも検討課題の中にいれ、研究の実施計画の遅れが取り戻せるよう検討していく必要がある。 実地調査に関しては、今後、ニューヨーク州に限らず、米国全土の在宅ホスピスにボランティアとしての受け入れ依頼を継続して行っていく。またそれでも難航する場合は、米国だけではなく、英国など、実地調査国の再検討を行っていく。
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Causes of Carryover |
米国ニューヨーク州の訪問看護大規模事業所への調査依頼の受け入れが難航しているため、その旅費と謝金にあてていた内容を次年度に使用する予定である。 また、スピリチュアルケアカウンセラーの活動については、研究会で実際の活動状況を報告しており、その際に認知症高齢者を対象としていることがわかった。そのため、スピリチュアルケアカウンセラーへの謝金と旅費の軽減につながった。 さらに、5事例の調査研究を予定していたが、それができていないため、予定していた旅費の計上ができていない。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
実地調査予定であった米国ニューヨーク州の訪問看護大規模事業所への調査依頼が難航している。調査依頼は、米国全土に広げており、それでも難航するようであれば、英国など実地調査する国へ変更することと次年度の予算の再検討を行う。 次年度、研究実施計画の遅れを取り戻すために、10事例の認知症高齢者へのインタビューとデータ分析を行う際、テープ起こしとデータスクリーニングを業者へ依頼する。その予算を、今年度スピリチュアルケアカウンセラーへ予定していた謝金等で補うこととする。
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