2017 Fiscal Year Research-status Report
在宅で過ごす認知症療養者のスピリチュアルペインの把握
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16K20820
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
沖 亞沙美 香川大学, 医学部, 助教 (70774024)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 認知症 / 高齢者 / スピリチュアルペイン / 日本人 / 在宅 / 家族会 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請している課題の研究目的は、在宅で過ごす認知症療養者のスピリチュアルペインを把握することである。認知症療養者が抱えるスピリチュアルペインをどの程度抱えているか、認知症当事者へ調査を行うことで、本人と家族へどのようなスピリチュアルケアや支援が必要か検討することができると考えた。 当該年度の研究実施計画は、①5事例の調査研究、②得られたデータの整理とデータクリーニング、入力、③統計的分析を行い、専門的知識を得ること、④分析結果を、学術学会で成果報告し、批判的考察を収集する、⑤投稿論文を作成し、学術学会に投稿することを予定していた。 計画当初は量的研究を行う予定であったが、認知症療養者を対象とするスピリチュアルペインを把握する尺度において信頼性妥当性が十分に検証されている本人を対象とした尺度が見当たらなかった。そのため、研究目的に沿って、スピリチュアルペインの構成要素を抽出する試みへ計画を変更し、倫理審査委員会に申請していた。現在は、認知症高齢者が体験するスピリチュアルペインの内容を把握する研究に変更し、研究デザインを質的研究(現象学による分析)として、倫理審査委員会の承認を得ている。研究対象者を認知症の人と家族の会に参加する方と認知症対応型通所介護施設を利用する方を対象とし、認知症という疾患の特殊性から、参与観察を継続的に行っている。対象とする施設のゲートキーパーへの説明と家族への説明をまず行っていった。家族の傾向として、本人の認知症の重症度が高く、本人が他者を認識して語るような方の家族は研究の同意が得られるが、本人の認知症の重症度が低く、自身の体験している内容を語ることができるような方は、認知症が進行しているような不安定な状態で、家族の同意も得られにくい状況である。また、現象学による分析の視点を醸成するため、現象学の研究会にも参加している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当該年度の研究実施計画は、①5事例の調査研究、②得られたデータの整理とデータクリーニング、入力、③統計的分析を行い、専門的知識を得ること、④分析結果を、学術学会で成果報告し、批判的考察を収集する、⑤投稿論文を作成し、学術学会に投稿することを予定していた。 一昨年度実施した内容による結果を受けて、研究計画書を修正し、在宅で過ごす認知症高齢者のスピリチュアルペインの構成要素の抽出としていた。しかし、香川大学医学部の倫理審査委員会への申請と承認を得ることに半年間の時間を要した。それと並行して認知症高齢者の当事者研究の方法や、結果の明確性、データの収集方法と分析方法について、認知症の研究者のスーパーバイズを受けたり、認知症を対象とした施設の管理者などから専門職としてのアドバイスを受け、多角的な視点で批判的考察を受ける機会を得た。このことから、認知症という疾患の特殊性を加味し、病状的に患者負担を最大限軽減する方法と、倫理的な配慮、研究としての妥当性・信頼性を確保するため、研究目的に沿って、在宅で過ごす認知症高齢者が体験するスピリチュアルペインの内容を把握する研究計画書に変更した。香川大学医学部の倫理審査委員会の承認を得てから、参与観察などのフィールドワークを開始した。 研究協力に同意の得られた施設への参与観察を行うなかで、認知症高齢者が体験しているスピリチュアルペインの内容は少しずつ表出されていることが確認できている。家族と本人の同意を得ることが難しかったが、現在1名のデータ収集が継続して行えている。そのため、一昨年の⑤5事例の調査研究はできていない。継続して、研究協力に同意の得られる施設または家族会を県内としていたが、近郊県に広げ、研究対象者の選定とその家族と本人の研究協力の同意を得ることを勧めている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究のデータ分析には、現象学を用いるので時間が必要である。研究者は、現象学の分析を多角的に行う経験に乏しいため、現象学の研究者から専門的知識および技術の提供と助言、指導を得る予定である。また、研究対象者を、3名から10名と計画していたが、本年度で昨年度の遅れを取り戻すために、1名から3名に減らし、この研究課題では、④分析結果を学術学会で成果報告し、批判的考察を収集するまでを本研究の実施計画にすることに変更する。
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Causes of Carryover |
(理由) 米国あるいは英国への訪問看護大規模事業所への調査依頼の受け入れが難航し、その旅費と謝金に充てていた内容を昨年にあてていたが、その後も難航したため、一旦中断した。香川大学医学部の倫理審査委員会への承認を得ることと、研究目的遂行のためのデータ収集方法の検討、研究協力に同意してもらえる家族会や施設訪問、参与観察、フィールドワークを繰り返し、それらに時間を費やした。 (使用計画) 月2回の現象学の研究者と研究会を行うための旅費と謝金の計上、月1~2回の京都の家族会への参加の旅費、月2-4回の大阪の研究協力施設訪問の旅費、また、大阪と東京で各々隔月で行われている現象学研究会への参加の旅費を計上する。また、作業効率を上げるために、持ち運びが可能なノート型パソコンの購入のための予算の計上を予定している。
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