2017 Fiscal Year Research-status Report
統合失調症患者を抱える家族の心的トラウマへの認知行動療法の効果検証
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16K20822
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
高原 美鈴 琉球大学, 医学部, 助教 (60522191)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 統合失調症 / 家族 / 心的トラウマ / SST |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度より継続し統合失調症患者の家族を対象に、質問紙調査と半構造化面接を実施した。 面接調査では、統合失調症患者の母親に着目し、統合失調症を患う息子の診断前から現在における経過のなかで、息子の言動や急性期症状など変化する病態にどのような姿勢で対応してきたのかを明らかにすることを目的として実施した。研究方法は、半構造化面接を実施し、面接内容を逐語録に起こし、修正版グランデッド・セオリーアプローチによる継続的比較分析を行った。統合失調症を患う息子に対応する母親のケア意識の変容プロセスは、【病的言動への対応と孤立】、【継続する治療の中で繰り返す再燃に耐える】、【息子と共に生きる覚悟と希望】の3つの相互関連を中心に構成されていた。本研究から、母親は息子の不可解な言動に暗中模索しながら一人で対応していた。ようやく専門医につながりながらも、攻撃的言動は続き、繰り返す再燃に耐えていた。長い経過を経て、母親は会得した対応への自信とありのままの息子を受容し、家族や仲間の支えによって、息子と共に生きる覚悟と希望を見出すプロセスが明らかとなった。以上のことから、精神保健に携わる関係者は未治療期間の困難な状況を理解し、地域社会への適切な情報提供および精神科にアクセスしやすい環境を整備するとともに、医療につながった患者家族へのケアおよび家族会参加などを促すアプローチの必要性が示唆された。 平成29年5月から11月には統合失調症患者の家族に対して、Social Skills Training(以下、SST)前後にフォーカスグループインタビューを2回実施し、SSTは10回実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度より継続し、統合失調症患者の家族に対して質問紙調査と半構造化面接を合計15名の家族に面接調査を実施した。また、H29年度には統合失調症患者の家族8名に対して、フォーカスグループインタビューおよびSSTの介入研究も実施することができた。以上のことから、おおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策は、面接調査の内容を修正版グランデッド・セオリーアプローチによる継続的比較分析の結果をまとめ、学会誌投稿に向けて取り組んでいく予定である。また、質問紙調査の結果を分析し、フォーカスグループインタビュー2回分とSST10回分の質的帰納的分析を行う予定である。以上の取組みで得られた知見を学術学会等で発表する予定である。
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Causes of Carryover |
平成30~31年度にかけて、これまで実施した質問紙調査や面接調査、介入研究の分析を行い、論文投稿や学会発表等を計画している。そのための英文論文校閲や投稿料、成果発表等国内外の研修会や国際学会に参加するための旅費や滞在費等の経費に充てる予定である。
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