在日外国人の精神的健康とストレス対処行動に関する研究

2020 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 16K20852
• Research Institution: Hamamatsu University School of Medicine
• Principal Investigator: 増田 郁美 浜松医科大学, 医学部, 助教 (80771667)
• Project Period (FY): 2016-04-01 – 2022-03-31
• Keywords: 在日外国人 / 技能実習生 / 精神的健康 / メンタルヘルス

Outline of Annual Research Achievements

2020年度は研究デザインについて再度検討したのち、倫理審査を経て対象者へのインタビューを開始した。
研究デザインを再度検討した際には、技能実習生自体に関する先行研究、および、そのメンタルヘルスや個人的な体験についての調査が非常に少ないことが明らかとなった。そのため、まずは技能実習生の経験、感情、認識について深めつつ、対象者の抱える精神的な負担や不安、ストレスなどのメンタルヘルスについても考察するために、当初計画を見直し、質的帰納的研究での調査が妥当であるとの結論に至った。しかしながら、2020年3月頃より新型コロナウイルスの流行が顕著となっており、感染症の流行状況がメンタルヘルスに影響することを鑑み、さらに計画を一部見直し、新型コロナウイルス感染症流行下におけるメンタルヘルスと生活状況についての主観的体験について質的に調査することとした。
なお、法務省の統計によると、国籍別の技能実習生の人数はベトナム国籍者が最も多く（令和元年）、増加傾向にあることから、本研究ではベトナム人技能実習生を研究対象とした。
その後、前年度の検討事項（文献レビュー等）を踏まえて研究計画書を作成し、本学の倫理委員会に倫理申請を行い、審査を経て承認いただいたのち、対象者へのインタビューを開始した。インタビューでは、対象者のメンタルヘルスに関する気持ちを引き出すことが難しかったため、研究協力者との打ち合わせを重ねて、インタビューの内容や方法を検討した。コロナ禍での実施となり、予定通り進めることが困難ではあったが、アクリル板の設置や手指消毒の徹底等、またはオンラインへの切り替えなど対策を行い、3月までに9名のインタビューを実施することができた。

Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

在日外国人に関する文献レビュー結果や新型コロナウイルスの影響により、2020年度は研究計画の見直しに時間を要したが、倫理審査を経て、9名のインタビューを実施することができた。しかしながら、3月までに12名程はインタビューを終了している予定であったため、進捗状況は「やや遅れている」とした。対象者へのインタビューが遅れた理由は、①インタビューで対象者のメンタルヘルスに関する気持ちを引き出すことが難しかったため、インタビューの内容や方法を再検討するのに時間を要したこと、②インタビューを数名実施した時点で一旦インタビューを休止し、技能実習生の抱えるメンタルヘルスについての思いや、生活面での主観的体験についての主な回答結果について、振り返りを行い整理したかったためである。この分析結果を踏まえて、2021年度は残りの対象者にインタビューを行っていく予定である。

Strategy for Future Research Activity

研究デザインについての再検討の結果、未だ先行研究が少ないと考えられる技能実習生の主観的な体験について、および感染症の状況下での感情や行為の意味について、より深く分析するためには、計画の一部を見直し、対象人数を増やすことで（20名予定）、質的研究に重きを置くことが重要であると考えた。そのため、研究デザインを質的研究に切り替え、2021年度も引き続きインタビューおよび分析を実施する予定である。

Causes of Carryover

2020年度は研究デザインの再考、実施計画の検討のために時間を要したことから、助成金の使途としてはICレコーダー、書籍等の必要物品の購入に留まったため、当該年度からの繰越金として次年度に使用額が生じることとなった。今後は、研究協力者への謝礼に200,000円、執筆（翻訳や論文投稿）に400,000円、必要物品に100,000円の支出を予定し、残金は予備費として備品や交通費等に充当する計画である。