2016 Fiscal Year Research-status Report
可変ナノギャップを利用した表面増強ラマン散乱による生体高分子の高感度検出法の開発
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16K20870
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
三友 秀之 北海道大学, 電子科学研究所, 助教 (50564952)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 金ナノ粒子 / ゲル / プラズモン / 表面増強ラマン散乱 / 高感度検出 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、金属ナノ構造体が特定波長の光の照射下で示す表面プラズモン共鳴を利用した生体高分子の高感度検出法として、表面増強ラマン散乱測定基材の開発を進めている。表面プラズモン共鳴は金属ナノ構造体の中でも鋭利な部分で強く増強され、特に狭いギャップ部位において著しく増強されることが知られているが、狭いギャップ部位に大きな生体高分子を導入することは容易ではない。そこで、本年度は、鋭利な構造体として三角形プレート状の金ナノ粒子を合成し、自己組織化の手法によって基板上に頂点が向き合った最密集積構造体の作製し、それをハイドロゲル表面に転写することでギャップ距離を制御する手法の開発に取り組んだ。金の三角形ナノプレートの合成および様々なアルカンチオール分子を用いた表面修飾に成功した。基板上である程度最密に集積化した構造体の作製にも成功したが、ハイドロゲルへの転写に課題が見つかった。ハイドロゲルへの転写に向けて金ナノ粒子の表面修飾を変更した結果、基板上に集積構造体を作製することが難しくなった。そのため、集積構造体の作製とハイドロゲルへの転写の両方を可能にする表面修飾方法の探索に取り組んでいる。一方で、上記がうまくいかなかったときの対応として、電子線リソグラフィを利用して金ナノ三角形プレートの構造体を作製し、ハイドロゲル表面に転写する手法についても取り組み始めた。今後は、金ナノ粒子の自己組織化および電子線リソグラフィの両手法を利用し、金ナノ構造体を作製し、ハイドロゲル上に転写する方法の開発を進め、ギャップ距離の制御と表面増強ラマン散乱測定の評価に取り組んでいく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当該年度においては、三角形プレート状の金ナノ粒子を作製し、様々なアルカンチオール分子を用いた表面修飾にも成功しているが、自己組織化による集積構造体の作製とハイドロゲル表面への転写を両立する条件は未だ見いだせていない。対応策として、電子線リソグラフィを利用して金ナノ構造体を作製して、ハイドロゲルへの転写に取り組みはじめている。後者の方法では成果がでつつあるが、ひとつひとつの作製に時間と費用がかかるという問題もあるため、自己組織化の手法も同時に検討を続けている。当初は転写手法を確立する予定だったため、若干遅れていると判断している。一方で、電子線リソグラフィを利用した研究に取り組んだことで、当初の予定には含まれていなかった「ゲル上に転写された金ナノ構造体を観察する手法の開発」として、ゲルの水分をイオン液体に置換し、電子顕微鏡でナノ構造を観察することにおいて成果が得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、引き続き、金ナノ粒子の自己組織化および電子線リソグラフィの両手法を利用して金ナノ構造体を作製し、ハイドロゲル上に転写する方法の開発を進める。転写手法を確立した後、スペクトル測定とシミュレーションを行い、ギャップ距離の制御について評価を行う。さらに、小分子と巨大分子を用いて表面増強ラマン散乱測定を行い、ギャップ距離の動的制御を利用した検出法の評価に取り組んでいく予定である。
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Causes of Carryover |
金ナノ粒子の調製が順調に進み、試薬購入費が予定よりも削減できたこと、年度末の共用機器の使用料の請求が翌年度になっているため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度未使用額は、平成29年度に実施する計画の内、金ナノ構造体の作製費用に充てる。
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Research Products
(14 results)