2017 Fiscal Year Research-status Report
ポストソ連期南コーカサスにおける支配政党の比較研究
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16K20881
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
立花 優 北海道大学, 文学研究科, 共同研究員 (20733330)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 政党 / 議会 / 比較政治学 / コーカサス |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、2016年に起きたグルジアの旧与党で野党第一党だった統一国民運動(UNM)の分裂の影響と、グルジア政治における政党の安定性についての研究を進めた。この研究は、本研究課題の平成28年度研究実施計画に関わる内容であり、重要な研究対象であったUNMが分裂したことで当初計画に見直しが必要となったことを受けてのものである。 2012年議会選挙による政権交代がグルジアの民主化を促すものとして一般的に評価されているのに対し、この研究では、旧与党が下野後も一定期間野党第一党として大きな影響力を維持し続けたこと、その状況が2016年議会選挙を境に失われつつあることがより重要な点であると指摘した。また、旧与党が前大統領の影響力から脱しようとさまざまな改革を進めていたにもかかわらず、2016年の分裂において今なお前大統領の個人政党的性格を強く持つことを露わにした点を明らかにした。このことは、コーカサス地域における政党の意味を考えるうえでも重要な発見である。さらに、この研究で指摘した、グルジアにおける「競争可能な野党の不在・弱体化」と「与党の総取り状態」という現象が、同国の現与党を新たに支配政党化させる要因となるのではないかという仮説は、本研究課題の目的である「コーカサス三国における支配政党の形成と維持の分岐要因」を考える際の一部分をなすものであり、現時点で一般的な、グルジアの民主化に対する楽観的な見方に一石を投じるものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は、昨年度に起きたグルジアでの旧与党分裂による研究計画の見直しを受け、当初計画にあったアルメニアの調査・研究ではなく、グルジア情勢の整理と研究成果報告に注力した結果、当初計画分の実施が後回しとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
グルジア・アルメニアで大統領制から議会制への転換が起こった結果、いまだ大統領制を採るアゼルバイジャンとグルジア・アルメニアとの間で、基本的な政治制度の相違が明確化した。この政治制度の転換が、支配政党と議会・議員との関係にどのような影響を与えるのかを精査する必要がある。
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Causes of Carryover |
平成28年度研究実施計画が、重要な調査対象であった旧与党の分裂により見直しを余儀なくされたことから、平成29年度実施予定であったアルメニアでの現地調査がずれ込む結果となった。今年度は、平成29年度分として当初予定していたアルメニアでの現地調査と、平成30年度実施予定であったアゼルバイジャンでの現地調査を実施する。
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Research Products
(1 results)