2018 Fiscal Year Research-status Report
北海道東部沿岸に生息するゼニガタアザラシの個体群パラメ-タ及び個体数の推定
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16K20883
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
小林 由美 北海道大学, 農学研究院, 研究員 (30634737)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 野生動物管理 / 哺乳類 / 北海道 / アザラシ / 海洋環境変化 |
Outline of Annual Research Achievements |
Web上のゼニガタアザラシデータベースを活用し,北海道東部の調査地,大黒島におけるゼニガタアザラシの個体群パラメータの算出をおこなった.その結果,本種の年間死亡率は,幼獣(0-1才)で約22-40%,亜成獣(2-4才)で10%前後,そして5才以上の成獣では,5%以下であることが示唆された.成獣メスの年平均子連れ率は平均約72%であり,毎年高い確率で妊娠・出産すること,ただし,20%程度で流産・死産があることが判明した.オスに関しては,7才程度から繁殖期にメスをめぐるオス同士の闘争の際に負うとみられる傷を負っていることから,生理的な繁殖年齢(4-5才程度)よりも社会的な繁殖年齢の方が高いことが示唆された.これは,オットセイやトドなど,陸上繁殖型でハーレムを作る他の鰭脚類の傾向と一致する.ただし,オットセイやトドなどは,実際にハーレムの主である期間は2年程度であるといわれているが,本種の場合は20才を超えてもオス同士の闘争で得られたと推測される傷を負っている個体がいた.これは,水中交尾を行い乱婚(レック性)を持つというゼニガタアザラシの種の特異性を示しているのかもしれない. 個体識別結果から,ゼニガタアザラシは毎年高い出産率をもつが,子どもの頃の死亡率が高く,成長したあとはなかなか死なない,といった生物であることが明らかになった.初期死亡率は,気象海象条件に左右することが示唆された.海洋環境変化 (地球温暖化)による行動の変化や移動・交流があるロシア海域における近年の人為的開発の影響といった可能性が推察された.また,1970年代以降,北海道沿岸海域では,本種の年平均増加率は3-5%程度であり,海外と比べると低く,これは沿岸漁業による混獲の影響が示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当初,想定したよりもゼニガタアザラシの寿命が長く,35年以上観察されている個体がいるため,作成したモデルを改良する必要がある.また,調査時期に天候不良(台風の接近)により,調査ができなかった期間があった.
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Strategy for Future Research Activity |
出産・育子期(5-6月)と換毛期(7-8月)のゼニガタアザラシセンサスに参加する.増加率の年代変化と海洋環境変化ならびに人為的影響(沿岸開発や漁業)との関連性を解析し,特に近年,北海道沿岸域における本種の増加率が低下している要因を検討する.
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Causes of Carryover |
天候不良により,実施できなかった調査があった.あらためて調査実施予定である.
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Research Products
(5 results)