2016 Fiscal Year Research-status Report
ブタの精漿タンパクが子宮に及ぼす免疫変化の機序の解明と受胎性の関係に関する研究
Project/Area Number |
16K20884
|
Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
奥山 みなみ 大分大学, 医学部, 助教 (50756781)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 豚 / 受胎 / 精漿 / 免疫 / 子宮内膜 |
Outline of Annual Research Achievements |
本申請研究は精漿を利用したブタの繁殖成績の向上を目指し、精漿に含まれるタンパク質の機能と子宮内膜上皮の免疫反応に焦点をあて、精漿がブタの受胎性におよぼす影響を明らかにすることを目的としている。 本年度は豚の子宮内膜細胞における精漿への反応性を評価するための細胞培養系の立ち上げを大きな目標としていた。子宮内において最初に精漿の暴露を受けるのは上皮細胞であるため、まずは上皮細胞を単離培養することが必要であるが、上皮細胞の単離には間質細胞が混入しやすく培養を進めると増殖性の高い間質細胞に上皮細胞が負けてしまうのが一般的である。本件においては単離条件を工夫したことで上皮細胞に加え、間質細胞それぞれを純度高く単離することができるようになり、培養系の立ち上げが完了した。さらに各培養系において他方の細胞の混入がどの程度あるかを評価するため、上皮、間質両細胞それぞれの特異マーカーをターゲットにした免疫染色の条件検討も行った。 また、解析に必要なリアルタイムPCRについても免疫に関係するサイトカイン等15項目について豚での系を確立させた。実験に必要な材料の入手については大分県内各所および県外畜産試験場に協力を依頼し、それぞれ分与されている。予備試験によって、精漿に含まれるタンパク質は品種、個体間で有意な差はないものの、採取日間でその存在量にばらつきがあることが明らかになっている。そのため実験に用いる精漿材料は複数個体から複数採取したものをプールし使用する予定である。すでにこれまでに豚の精漿を3品種、各2個体、3採精日分(のべ18検体)のサンプルを得ており、現在この精漿のろ過方法を検討中である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は当研究計画の初年度であったが、申請者の所属が6月から変更になり、新たな所属先での研究環境の立ち上げに時間を要した。しかしながら基本的な培養系の立ち上げ、および計測系の立ち上げを完了させることができたため、大幅な遅れはないとみている。
|
Strategy for Future Research Activity |
以下の通り研究を進めていく。 [実験1:精漿のろ過と分画化]in vitroにおいて子宮内膜細胞に精漿を添加し、暴露後の各種増殖因子の発現変化を定量していく予定である。培養系に精漿を添加するためには微生物の混入増殖を防ぐため、精漿を事前に滅菌ろ過することが望ましい。現在この精漿ろ過に取りくんでいるが、精漿は粘度が高く夾雑物混入割合が非常に高いため難航している。今後複数の遠心条件やfiltrationを試み、最適な条件を模索する。また、精漿中に含まれるタンパク質を分子量差あるいは化学的性質に基づき分画化させるため、複数のクロマトグラフィーを用い、分離の条件を絞っていく。 [実験2:子宮内膜の培養細胞への精漿添加試験]生体から採取し培養した子宮内膜上皮細胞について、精漿全液あるいは実験1で得られた精漿分画を添加培養することで、子宮における精漿への初期反応を明らかにする。解析にはリアルタイムPCR、ELISA、フローサイトメトリー等を利用するため、まだ確立されていない実験系については条件検討を行う。本試験の結果をもとに、分画化された精漿のうちに子宮内膜上皮細胞へ何らかの働きを示す因子を持つ分画を特定し、さらにそれらを実験1で示す複数のクロマトグラフィーに通すことによって、子宮内膜において増殖因子の発現変化を引き起こす精漿タンパクの特定に結び付けていく。 [実験3:末梢血単核細胞(PBMC)の分離培養と精漿添加試験]本研究の申請時には未計画であり新たに実験に加えた内容である。子宮内膜細胞の培養系において子宮局所の精漿への反応を解析するのと同時に、全身性の免疫反応を合わせて評価するため、豚PBMCの分離培養と培養液に精漿を添加した場合の反応を上記に記載したと同様の方法で解析する。
|
Causes of Carryover |
本年度は当研究計画の初年度であったが、申請者の所属が6月から変更になり、新たな所属先での研究環境の立ち上げに時間を要した。そのため研究計画がやや遅れており、次年度に実施する研究内容のために使用額を繰り越しさせた。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度進める予定であった精漿分画化のためのクロマトグラフィー関連試薬や物品を購入することに充てる予定である。また、当初申請した計画には記載していなかった新たな実験系である末梢血単核球分離と培養試験のための経費として用いる。
|