2016 Fiscal Year Research-status Report
岩盤水分量の定量化手法の確立と寒冷地岩盤における水分挙動の解明
Project/Area Number |
16K20886
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Research Institution | Kitami Institute of Technology |
Principal Investigator |
渡邊 達也 北見工業大学, 工学部, 助教 (80636168)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 凍結融解 / 岩盤 / 物理探査 |
Outline of Annual Research Achievements |
積雪寒冷地域の岩盤斜面では、融雪期や厳寒期に落石や表層崩壊が多数発生する。これらのイベントを引き起こす寒冷地特有の物理破壊現象には水分供給が重要であるが、岩盤水分量を非破壊的かつ定量的に計測する手法は確立されておらず、岩盤内部の水分分布・挙動は十分に理解されていない。地中レーダーが発する電磁波の伝播速度は、媒質中の比誘電率に依存し、比誘電率は水分量と強い相関がある。ゆえに、地中レーダーは非破壊的な水分計測手法として有用であるものの、岩盤水分量測定への適用事例はない。そこで本研究では、地中レーダー探査法による岩盤斜面内部の水分量の計測手法を確立し、岩盤水分量の時空間変化を捉えるとともに、凍結風化・破砕現象発生期における水分挙動の実測をもとに寒冷地岩盤斜面の風化プロセスの実態を解明してく。このことにより、寒冷地岩盤斜面で生じる風化プロセスの実態やその発生条件をより具体的に提示することができ、岩石風化を扱う地形学や斜面災害に関わる地盤防災化学科学の進展に寄与することが期待される。 今年度は、1.岩盤水分量の時空間変化を捉える、2.岩質による水分特性の違いを把握することを目的とし、北海道北見市内の岩盤斜面2地点(凝灰岩および付加体コンプレックス斜面)を対象に、冬期間を中心に地中レーダー探査を繰返し実施した。また、地中レーダーの反射波形と岩盤斜面内の水分分布の対比を行うために、岩盤斜面を掘削し、土壌水分測定に汎用されているTDRセンサーを埋設して、岩盤斜面内での比誘電率変化の観測を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
地盤凍結開始前の11月から融雪が始まる3月にかけて現地での地中レーダー探査を実施し、本研究の核となるデータを取得することができた。凍結の進行とともに、反射波形の変化が認められることから、岩盤内での水→氷の相変化や水分量の変化を捉えられているものと考えている。当初は、考古学分野で取り組まれている2次元計測手法の適用を考えていたが、急斜面および極寒の条件下での実施は困難であることから断念した。1次元の探査であっても研究の新規性は保てることから、探査地点を増やすことで対処した。
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Strategy for Future Research Activity |
冬期間に取得した探査データの解析を行い、電磁波伝播速度の変化から岩盤斜面内の比誘電率分布を明らかにする。岩盤水分量を算出するためには、岩石中の比誘電率と水分量の関係式が必要であるが、そのような式はこれまでに構築されていない。今後、調査対象岩盤から採取した岩石試料を用いて、岩石の比誘電率と水分量の関係を室内実験にて明らかにする。また、現地観測データ(地温、比誘電率)と比較を行い、地中レーダーの波形変化がそれらと整合的か検証を行う。
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Causes of Carryover |
年度末にレンタル機材を返却する際の運搬費用として計画していたが、年度跨ぎで機材のレンタルを受けることになり、急遽支出する予定がなくなったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度明けにレンタル機材を返却する際の運搬費用に充てる。
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