2017 Fiscal Year Research-status Report
CNTの力学・電気・熱的特性制御のためのナノ構造制御ガイドラインの構築
Project/Area Number |
16K20904
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
白須 圭一 東北大学, 工学研究科, 助教 (20757679)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | カーボンナノチューブ / 引張試験 / 公称強度 / 線膨張係数 / アニール処理 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究1.昨年度に合成と高温アニール処理を行ったCNTに加えて,より直径の細いCNTを用意した.細径CNTに対しても2000℃のアニール処理を行い,結晶性が向上することが認められた.以下の研究3にて,昨年度準備した超高温アニール処理済CNTを用いて力学特性評価と線膨張係数の評価を行った.また,細径CNTを用いて力学特性評価を実施した.
研究3.まず,CNTにおける軸方向線膨張係数と結晶性との関係を明らかにすることを目的として,配向MWCNT/エポキシ複合材料を作製し,複合材料におけるCNT配向方向の線膨張係数の評価を行った.また,ここで得られた実験結果と複合則を用いてCNTの軸方向の線膨張係数の算出を行った.配向CNTシートをエポキシ樹脂に添加することにより,複合材料のCNT配向方向の線膨張係数は負値となることがわかった.複合材料の線膨張係数からCNTの軸方向の線膨張係数を評価することができ,CNTは負の線膨張係数を有していることがわかった.また,アニール温度の増大,即ち結晶性の向上に伴い負の線膨張係数は大きくなる傾向が認められた.この結果は,MWCNTに含まれる構造欠陥の減少に伴うsp2結合の増加が,炭素六角網面の面外方向への振動を増大させていることを示唆しているものと考えられる. 次に,上記と同じCNTを用いて力学特性評価を行った.当該CNTは屈曲構造欠陥や不連続構造欠陥を有しており,引張試験を行うとこれらの構造欠陥から破断することがわかった.超高温アニール処理を行っても当該欠陥は全て除去されておらず,これに起因して公称強度およびヤング率に大きな差異は認められなかった.細径CNTに対して引張試験を行ったところ,上記のCNTに比べて大きな公称強度を有していたものの,依然飛躍的な強度向上には至っておらず,更なる構造と特性の関係性について検討する必要があると考えている.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載した研究実施計画に対して,研究実績の概要に示す成果を挙げることができており,おおむね順調に進展している.アニール処理温度の高温化による結晶性の向上に伴いCNT軸方向の線膨張係数が変化することがわかり,当初の仮説を実証する結果が得られたものの,依然公称強度の大幅な向上には至っていないため,次年度は特に力学特性評価に重点をおいて研究を遂行する予定である.
|
Strategy for Future Research Activity |
「現在までの進捗状況」にも記載したように,アニール処理によりCNTの構造制御は行えているものの依然公称強度の大幅な向上には至っておらず,CNTの力学特性向上のための構造制御指針の構築を継続して取組む必要があると考えている.CNTの引張試験は統計的なデータを取得するために十分な試験数と作業時間を要するため,次年度も重点的に実施する予定である.
|