2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K20907
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
井上 壮志 東北大学, 学際科学フロンティア研究所, 助教 (80637009)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 原子磁力計 / 生体磁気計測 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は原子磁力計の磁場感度向上に向けて, 磁場感度が依存するRb原子の非線形磁気光学回転 (NMOR) 信号のゼロ磁場付近における傾きのレーザー光パワー依存性とレーザー光変調周波数幅依存性を調べた. また, NMOR信号の傾きと同様に磁場感度が依存するNMOR効果に起因するレーザー光の偏光面の回転角度のパワースペクトル密度 (PSD) のレーザー光パワー依存性を調べた. そして, 現状の実験セットアップで最適なレーザー光パラメーター (レーザー光パワー:100 μW, レーザー光周波数変調幅: 1.3 GHz) を決定した. この条件で磁場感度を見積もったところ, 10 Hzでおよそ 16 pT/√Hz の磁場感度が得られた. また, 既知の磁場を矩形波として外部より印加することで, 100 pT オーダーの磁場変動に対して実際に原子磁力計が応答していることを確かめた. また, 現状で磁場感度を制限している要因として, 環境磁場の影響を取り除くために導入している磁気シールド内部の消磁では消去しきれない残留磁場, 及び残留磁場勾配と, Rb原子を封入しているガラスセルの内壁とRb原子が衝突するときに生じるRb原子スピンのデコヒーレンスであることがわかった. 磁気シールド内部の残留磁場と磁場勾配を取り除くために, 磁気シールド内部に導入する補正コイルの設計を進めている. また, ガラスセルの素材として新たな素材を用いることで, 従来のガラスと比べてデコヒーレンスを抑えるセルの製作を検討中である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」にある通り, 本年度, 磁場感度に直結するNMOR信号のレーザー光パワーと周波数変調幅に対する特性と偏光面回転角度のPSDのレーザー光パワーに対する特性を調べ, 最適なレーザー光パラメーターを決定したことで, 更なる磁場感度向上に向けた2つの開発要素 (磁気シールド内部の残留磁場と残留磁場勾配の消去, 及び新たなガラス素材によるセル製作) が得られた. このことにより, 脳磁計測に必要な磁場感度達成への具体的な指針がつき, 現在までの進捗状況は上記の区分の通りに評価できる.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、消磁で取り除けない磁気シールド内部の残留磁場, 及び残留磁場勾配を打ち消すための補正コイルの設計・開発を進める. そのために, シールド内部の残留磁場分布を計測し, その磁場分布をシミュレーションで再現し, 最適な補正コイル形状を決定する. また, 新たなガラス素材を用いて原子スピンのデコヒーレンスの小さいガラスセルを製作し, 原子のスピン緩和時間を計測し, デコヒーレンスの現状を確認する. そして, 補正コイルと新たなガラスセルを用いて, 改めて最適なレーザー光パラメーターを決定し, 脳磁計測に必要な磁場感度の達成を目指す.
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